護れ なかっ た 者 たち へ。 9歳で身近な人から性的な行為をされた私は10年間、誰にも言わなかった

護られなかった者たちへ : 作品情報

護れ なかっ た 者 たち へ

捜査線上に容疑者としてあがる利根泰久 保険事務所の職員に暴行を働き放火までして刑務所に入った利根が仮出所してから事件が起きた事で笘篠刑事は容疑者として目を付けるが証拠がありませんでした。 二人の被害者の共通点、それはかつて生活保護の担当者だった事。 国が生活保護受刑者の調整や申請を却下する水際作戦を指導する中で笘篠刑事は問い質すと改竄の痕跡がある書類を手にする。 餓死して亡くなった老人、遠山けい。 利根はチンピラに暴行を受けているところ助けてくれたのが遠山でした。 アパートで1人暮らしをしていた遠山は親の愛情を知らない利根と母親が身体を使って生計を立てていた近所に住む少年カンちゃんの面倒を見るようになりました。 遠山は生活保護を受け取れずに苦しみ最後はガス水道も止められ食糧が尽きて餓死して亡くなっていました。 当時の利根は救いたい一心で口論となり暴行を働いたのでした。 震災で妻子を亡くし「なぜ善人が議性にならなくてはならないのか」とやり場のない怒りを抱えていた笘篠刑事は利根の気持ちを理解してしまうが犯罪を許すというのは別の話。 しかし 利根が犯人だという確証が掴めません。 結末の前に・・・ 問題点はあるがフィクション 生活保護や福祉の問題点 生活保護を受けられず餓死するのは現実に存在している。 それとは逆に不正に受け取りパチンコで遊んでいる人もいる。 善人が損をするなんてあってはならない事、不正受給のせいでどんどん厳しくなって複雑になり本来必要な人に届かず国からは予算が削られていく。 声を出して権利を主張する人も正しければいいが、世間体やプライドを気にする人や他人様に迷惑をかけられないと真面目で声をあげない人もいる。 どん底にまで陥り勇気を持って訪ねてもダメだと言われたらこの先どうすればいいのか。 国策は弱者を守るためのものであってほしい。 最初は1人でも多くの人を助けたいと思って就職したかもしれない。 しかしすべての申請を受け入れていたら予算不足になってしまうのだ。 水際作戦を行なってはいたがほとんどの人が事務的になっていくと思う。 マンネリもあるだろうが不正受給を企む不届き者のせいで厳しく審査しようとすると受給者には睨まれまさに板挟み状態、考えるのも嫌になっていくだろう。 物語で事件の犯人は存在するが原因はどこにあるのかと考えさせられる フィクションである 現実にこんな職員がいたらさすがに問題、解雇だと思われる。 情報と想像で書き上げた小説だということを忘れてはならない。 取材に応じてくれた人の事を悪く書けなくなるというのが理由らしい。 不正に受け取るやくざは実際にニュースにもあったように存在していると思うが辞退届を書いてもらうために職員が1人でたずねるのはないだろうし、銀行口座照会で返事がずーっとないのもありえない。 申請者を養える親族がいないのか確認する際も連絡がないからという理由で生活保護却下はないと思う。 親族で縁を切っている人なんて多々いるだろう。 もうちょっと生活保護や福祉についての問題点を浮き彫りにさせて欲しかった。 難しくて1回だけの説明では理解出来ない制度は多々あるしおそらく問題点はあるのだから。 「人から受けた恩は別の人間に返そう、世間が狭くなってしまう」 知人の遺言を胸に真剣に申請者と向き合っていたが上司となったのは生活保護者だった知人を切り捨てた三雲でした。 三雲があの時のように事務的に行ない、思い遣りを持たずなぁなぁとこなすのを見て怒りが爆発、餓死がどれだけ苦しい事なのか思い知れとあのような犯行に至ったのでした。 そう、被害者は遠山を切り捨てた者、そしてもう1人の国会議員も狙われていた。 関係性を調べていた利根はその事に気付くのでした。 知人は遠山けい、そして利根と同じように面倒を見て貰っていたカンちゃんこそが円山幹子だったのです。 もしかしたら大事な箇所がごっそり抜け落ちているかもしれません。 犯人は利根ではないだろうと誰もが読んでいて察すると思うし職員なら目撃されても不自然ではないため犯人はすぐ分かってしまいました。 あの時の少年カンちゃんが円山幹子だったのは正直いらないと思いました。 カンちゃんは今どこにいるんだろうと思うし幹子の「幹」が「カン」と読めるので「もしや」と思ってしまう。 しかしこの物語は犯人は誰かというのはメインではないと思う。 原因となった本当の犯人は誰かと言うことですね。 だからあまり詳しく書きませんでしたと最後に言い訳しときますw.

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中山七里『護られなかった者たちへ』発売記念トークイベント

護れ なかっ た 者 たち へ

尸魂界 ソウル・ソサエティ の最高司法機関、中央四十六室。 四十六室の構成人員は裁判官と、尸魂界の誇る賢者と さ ・ れ ・ る ・ 者たちである。 しかし、彼らを本当に誇りに思っている者など、上層部の事情を何も知らない護廷十三隊の平隊員くらいのものである。 何故なら立場が上の者だけが知っているからだ。 彼らが、非常に頭の固い頑固者の集まりであるということを。 「第一級重禍罪・朽木ルキアを極囚とし、これより二十五日の後に 真央刑庭 しんおうけいてい にて極刑に処す」 そして、罪人の属する家の当主であるために、裁定の場にいることを許された朽木白哉。 六番隊隊長である彼も、四十六室の頑迷の程をよく知る者であった。 だから、白哉は分かっていた。 朽木家当主であり六番隊隊長でもある己でさえ、この決定を覆すことはほぼ不可能であるということを。 「……発言を、許してはいただけぬだろうか」 それでも、白哉は口を挟まずにはいられなかった。 ほぼ不可能……それでも、 極僅 ごくわず かながら可能性が残っているのならば、黙っている訳にはいかなかった。 「良いだろう。 発言を許可する」 「感謝する」 四十六室の賢者の一人が、尊大に頷いた。 形ばかりの礼を述べ、白哉は一歩前へ進み出る。 「此度の義妹の仕出かしたことは、赦されることではない。 当然、極刑を処されることに疑問などない」 単に事実を述べただけの白哉に、何が言いたいのだろうと四十六室の賢者たちは一様に疑問を抱いた。 しかし次に発せられた白哉の言葉は、彼が何を言わんとしているかを賢者たちに悟らせるのに、十分な意図を有していた。 「だが、そうせねば義妹の命はおろか、周囲にいた人間まで犠牲になっていたのもまた事実」 「ほう……」 ざわつく四十六室から片時も目を離さず、白哉は床に片膝をついた。 「結果論ではあるが、義妹の愚かな行いが救った命もある。 そのことも、ご考慮いただきたく存ずる」 大貴族は、そう易易と頭を下げてはならない。 そのため片膝をつくという行為は、朽木家当主という立場にある者として、最大限の礼の尽くし方であった。 「なるほど……貴様は、我ら四十六室の決定に異論を唱えるつもりでいるのだな」 「愚かなのは貴様の方だ。 誰に向かって物を言っておるのだ」 次々と飛び出す高慢な台詞に、白哉は不快な心情を表に出さないよう努めた。 今ここで、彼らに反抗していては元も子もないのだから。 「そうではない。 私は……この期に及んで、情けなくも義妹の減刑を乞うているのだ」 四十六室のざわめきが、嘲笑に変わる。 それを感じつつも、白哉は決して顔を下げなかった。 「自分が何を言っているか、分かっているのか?」 「大貴族の誇りはどうした。 この、恥晒しめ」 「……恥など、いくらでも晒そう」 恥晒し。 その言葉は、確かに白哉の心に突き刺さった。 けれど、彼は折れなかった。 白哉は、芯の通った声で語る。 「掟を守り、貴族として在ることは、私の朽木家当主としての誇りだ。 しかし……護るべき者を護ることもまた、私の誇りなのだ」 「それが、朽木ルキアとでも言いたいのか」 「その通りだ」 「……堕ちたものだな、朽木白哉」 「これを堕ちたと断ずるならば、それも甘んじて受け入れよう。 私は、どんなに恥をかこうとも、私の誇りに泥を塗るような真似はしない」 減刑を乞うことにより、朽木家を汚してしまうかもしれない。 だが家族を見捨てて朽木家の看板を守るという行為の方が、当主である白哉の誇りを汚す耐え難い屈辱であったのだ。 広い空間が静寂に包まれた。 けれど……それも数秒のこと。 プライドの高い彼らは、自らが臆してしまっていたことに愕然とし、そして激昂した。 そして、彼らは決して言ってはならないことを口にしてしまう。 「ハッ! 護るべき者? 笑わせる!」 「その『護るべき』妻子をむざむざ失った貴様が何を言うか!」 「…………っ!!!」 視界が真っ赤に染まった。 そう錯覚させる程の怒りが、白哉の全身を支配した。 噴き出した強大な霊圧が大気を揺らす。 むざむざ失った……確かにそうだ。 私は二人を護れなかった。 胸の奥に凝り固まったその後悔を、その悲哀を、今日まで殺して生きてきた。 白哉は初めて視線を床に落として、無表情の仮面を顔に貼り付けようと唇を引き結んだ。 ここで、これ以上霊圧を暴走させる訳にはいかない。 落ち着け、と己を説き伏せる。 そして、規則正しい呼吸ができるようになるのも待たず、白哉は絞り出すように言った。 「……済まぬ。 少々、取り乱した」 目を閉じる。 緋真と添い遂げ、愛情というものを知った。 桜花を授かり、一家の長としての役割を知った。 だからこそ救いたかった。 けれど、二人を護れなかった。 だから、今度こそ。 「再度、乞う」 灰色の瞳を開いて、白哉は立ち上がった。 そして、高みより白哉を見下ろす彼らの顔を見据えた。 握り締めた拳が、微かに震える。 「我等の裁定に間違いはない。 よって極刑は覆らぬ。 いくら朽木家当主とはいえ、そのような身勝手が許されると思うな」 裁定は下された。 「朽木家当主・朽木白哉の請願は、中央四十六室の名の元に却下された。 まだ、希望が潰えてしまった訳ではない。 堂々と胸を張り、何食わぬ顔の仮面を被ったまま、白哉は扉へと踵を返した。 その僅かな隙間から差し込む日の光だけが、牢の中にいるルキアに現在時刻を伝えてくれる唯一の存在だった。 「……私は、極刑となるのだろうな」 ルキアは誰にともなく、消え入りそうな声で呟いた。 しかし看守を務める平隊員の死神も、ルキアの呟きには気がつかなかったようだ。 もしかしたら心の中で呟いただけで、実際は声に出ていなかったのかもしれないが……どちらにせよ、ルキアにはそれを確かめる術がなかった。 そうして静かに物思いに耽っていた時、ふと外へと繋がる扉の外によく知る霊圧を二つ感じた。 扉に背を向けるように置かれた椅子から立ち上がって、ルキアは格子の正面にある扉の方を向いた。 恐らく、四十六室の裁定が下ったのだ。 腹に響くような重低音と共に、『六』と刻まれた分厚い扉が開く。 「白哉兄様……恋次……」 入ってきた二人はいつもと変わらないように見えた。 強いて言えば、恋次が若干不安げなくらいか。 極刑だなんて言えば、恋次が狼狽えるのは分かりきっている。 だから恐らくルキアの刑罰について、まだ知らされていないのだろう。 「兄様、四十六室は何と……?」 「そうっスよ隊長! 教えて下さい! ルキアは一体どうなるんスか?!」 「……そう急くな」 義兄は落ち着いた態度で、懐から取り出した書類を広げる。 その冷静な言動に、ルキアは自らの刑を悟った。 「……第一級重禍罪・朽木ルキアを極囚とし、これより二十五日の後に真央刑庭にて極刑に処す」 「まさか……!」 恋次が悲痛な声を上げた。 それに対して、ルキアは顔色一つ変えなかった。 「朽木隊長……どういう……」 「聞いた通りだ。 何度も言わせるな。 ……これが、尸魂界の最終決定だ」 白哉の表情は、これから義妹を失う者のするものではなかった。 そんな白哉を、恋次が信じられないものでも見るような目で凝視している。 「このルキア、覚悟はしておりました。 このような場所にまで来ていただき、ありがとうございました」 しかしルキアは穏やかな声色で礼を述べ、頭を下げる。 その心中は風一つ、波一つ立たない海のように凪いでいた。 緋真姉様を亡くした時や、桜花がいなくなった時とは違うのだ。 白哉とルキアは家族のように親しげに会話をする間柄ではないし、ましてや血が繋がっている訳でもない。 だからむしろ、恋次のように「白哉はルキアを助ける」と本気で信じていた者の方がおかしいのだ。 白哉がルキアを朽木家の者として扱ってくれたのは、失った二人によく似ていたからでしかないのだから。 「ルキア……」 そう考えていた故にルキアは、不意に呼び掛けられた義兄の声が不自然に揺らいでいるという現実を、理解することができなかった。 「……兄様?」 何事かと、恐る恐る白哉の顔色を伺う。 白哉の出で立ちは先程と全く同じ、冷静で堂々たるものであった。 ならば、今の揺らぎは一体何だったのだろうか。 くるりとルキアに背を向けた白哉が、呟いたのだ。 「済まない」 ルキアは息を呑んだ。 小さな謝罪。 それはつまり、極刑を防げなかったことへの謝罪だ。 すなわち、白哉はルキアを救う気があったということで、先程の声の揺らぎは聞き間違いなどではなかったということで。 その背中が、ほんの僅かに揺れたように感じた。 それを、背を向けた白哉が遮った。 「他に誰が居ようとも、それはお前が居なくても良いという理由にはならぬ」 「っ……!!」 白哉にとっては、何気なく放った一言に過ぎなかったのだろう。 だが、ルキアは自らの耳を疑った。 白哉の言葉を、自分の都合の良いように脳内で書き換えたのかとすら思った。 それほどまでに、義兄の言葉は耳触りの良いものだった。 「兄様……?」 「…………」 縋るように問いかけたルキアに、白哉は何も返さなかった。 背を向けたまま、重苦しい扉を潜って退室してしまった。 白哉のいなくなった空間に残されたのは、視線の遣り場を失って俯いたルキアと、そのルキアを黙って見つめる恋次の二人だけであった。 一分か二分か。 はたまた一時間か。 時間感覚を狂わせる沈黙を破ったのは、ルキアの方だった。 「恋次」 「……どうした」 呼び声に、恋次は短く応える。 「私は……緋真姉様や桜花の代わりでは、なかったのだな」 「はぁ?!」 恋次が素っ頓狂な声を上げた。 ルキアに面影を重ねていた訳でも、妻子を失った悲しみをルキアで埋め合わせていた訳でもなかった。 朽木白哉は、朽木ルキアのことを ル ・ キ ・ ア ・ と ・ し ・ て ・ 、そして 義妹 いもうと として扱ってくれていたのだ。 「罪を犯したその時より、腹は括っていた。 だが……」 心積もりなど、あの一瞬で弾け飛んだ。 ルキアは代わりなどではないと。 暗にそう言われた、あの瞬間に。 「私は、死にたくない……」 ついに両の足から力が抜けて、牢の檻に縋りつくように屈み込んだ。 義兄がルキアに「絶対に助ける」と断言しなかったのは、こうしてルキアの覚悟が揺らいでしまうことが分かっていたから。 そして恐らく彼は、ルキアがあのような勘違いをしていたとは夢にも思っていなかったのだろう。 だからこその、守れなくて「済まない」という言葉だったのだ。 白哉に守られることを当然と考えている者ならば、「済まない」という言葉程度で喜ぶ筈がないのだから。 「死にたく、なくなってしまったのだ……!」 その優しさが嬉しくて、それなのに何故か傷口に染みるように痛くて……ルキアはもう、どうすれば良いか分からなかった。 「誓ってもいい、隊長はお前を見捨てねぇよ。 照れているのだろうか。 見慣れたその顔は、前向きで明るい言葉の割に不機嫌そうに 顰 しか められていた。 「良いか、お前は俺たちが助ける。 だから、死ぬ覚悟なんてするんじゃねぇよ」 「…………」 白哉とルキアのやり取りの意味を理解しているのか、していないのか……どこか論点のズレた励ましの言葉だった。 けれど、格好つけた癖にどこか間抜けになってしまったその台詞は確かに、沈み込んでいたルキアを掬い上げてくれた。 「ふふっ……」 「んだよ、何笑ってんだ」 この憮然とした態度はきっと、そういうことなのだ。 ルキアに吐いた言葉の恥ずかしさを包み隠そうとしているだけなのだ。 そっと目尻の水滴を指先で拭う。 良い仲間を持ったものだ、とルキアは頬を緩めた。 「流石、副隊長ともなると良いことを言うものだな」 「……副隊長は関係ねぇだろ」 「大アリだ。 私の知らぬ間にえらく派手に昇進しおって。 ……よっ、すごいぞ副隊長!」 「おい」 「格好良いぞ副隊長! 変な眉毛だ副隊長!」 「うるせぇ!! 変な眉毛は余計だ!!」 そしてこの軽口も、柄にもない励ましを受け取ってしまった照れ隠しでしかないのだということ。 それは、ルキア本人ですら気づいていない真実であった。

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護られなかった者たちへ(映画)あらすじネタバレやキャスト|実写版結末は原作と違う?主題歌と予告動画も

護れ なかっ た 者 たち へ

「起こったことは起こったこと。 たまたま私に起きただけで、別に特別なことではなくて、いつ誰に起こるのかもわからない。 もし、これが私の妹や大切な人に起こってしまったら、ここで自分が何も語らなかったことに対してすごく後悔するはずだと思ったんです」 レイプ被害を実名で公表し、手記を書いたジャーナリストの伊藤詩織さんの言葉だ。 彼女にこのをした記事の最後に、私はこう書いた。 〈声をあげると「なぜか」と問われ、声をあげなければ「いない」ことにされる〉 私は9歳のときに、身近な男性から性的な行為をされた。 声をあげなかった私は「いない」ことになっている大勢のうちの一人だ。 「一緒に寝てあげる」 私が小学生の頃、母は英会話教室に通っていて、そこで親しくなったマレーシア人の男子留学生Bをよく自宅に招いていた。 食事を振る舞ったり、移動手段がないBを車であちこち送迎したり。 Bは当時25歳くらいで、私と3歳下の妹は「お兄ちゃん」と呼んで遊んでもらっていた。 小学4年生になる春休みのことだった。 Bが留学生の研修で東京に行くことになった。 日頃のお礼にと、子どもたちを東京ディズニーランドに連れて行ってあげる、という話になったらしい。 結局、妹はまだ小さいので私だけがBについていくことになった。 スペースマウンテンに乗ってみたかった私は、初めてのディズニーランドにウキウキした。 日程は3泊4日だった。 ユースホステルのような宿泊施設で、Bは私とは別の個室をとっていた。 初めて家族と離れて泊まる私は、夜になると心細くなった。 Bが私の部屋に来て、ベッドの上でトランプをした。 その時、何度かキスをされた。 それまでも膝の上で抱っこ、ハグ、頰ずり、頰にキスなどはあったので、外国流のコミュニケーションなんだろうと思っていた。 ひげがあたるのがあまり好きではなかったけれど。 シャワーを終えると、Bに「パジャマに着替えるのを手伝ってあげる」と言われ、全裸で立っているところを正面からじっと見られた。 体を触られた。 これまでと違って何か変だなと思い、「自分でできるからいい」と言って後ろを向いた。 そのとき、私はまだ初潮を迎えていなかった。 性の知識といえば、大人の男女は仲良くなるとキスをして、裸でベッドに入るらしい、という程度のものだった。 ますます心細くて家に帰りたくなって、泣いてしまった。 Bは「一緒に寝てあげる」と言って、私の部屋のベッドに潜り込んだ。 嫌だという気持ちと、でもBがいなくなって一人ぼっちになったらもっと怖くなるのではないかという気持ち。 そしてなぜか、「せっかく『寝てあげる』と言ってくれているのに、断ると悪いのではないか」という気持ちになって、Bの左横で寝ることにした。 朝方、目が覚めると、Bの右手が私の下着の中に入っていた。 Bは寝相が悪いのかな、と思った。 嫌だったので、体を左に向けて追い出そうとした。 恐怖のあまり声を出せなかったり抵抗できなかったりしたわけではなく、「起こしてはかわいそうだ」と思ったからだ。 体の方向転換だけで自然に逃れようとしたが、うまくいかなくて1時間ほどモゾモゾしていた。 Bが寝返りをうった隙に、トイレに行くふりをして部屋の隅に逃げた。 逃げてよかったのか悪かったのかわからず、心臓がばくばくした。 自分にとって何かとても嫌なこと 2日目の夜。 「一人で寝る」と言って鍵をかけたはずだったのに、夜中に目が覚めるとBが隣で寝ていた。 「何かあるといけないから」といってBが鍵を持っていたのだ。 また下着の中に手が入っていた。 今度は、不気味に感じた。 Bを揺り起こして「一人で寝られるからいい」と言って部屋に帰ってもらった。 3日目は、待ちに待ったディズニーランドの日だった。 スペースマウンテンは90分待ちだった。 列に並んでいる間、できるだけBと話さずに済むよう、他のアトラクションに気を取られているフリをした。 夜はBに鍵を渡さず、ベッドの中で握りしめて寝た。 自分にとって何かとても嫌なことが起きたのだけれど、痛いわけでも怖いわけでもなかった。 道徳で教わったダメなこととも、帰りの会で先生に怒られるようなこととも違う。 帰宅して家族から「楽しかった?」と聞かれ、「楽しかった」と答えると、まあそれ以外は楽しかったし、何かの間違いだったのかもしれない、と思うようになった。 ただ、Bとはもう話したくなかった。 Bが自宅に来ても、目を合わせないで避けるようになった。 3カ月後、私の誕生会にBを招待すると母が言った。 私は「嫌だ」と言った。 自分が会うのも嫌だったし、友達にBを会わせるのはもっと嫌だった。 母は「どうして?」と聞いてくれたが、うまく説明できなかった。 母は「外国人を差別するのは最低なことだ」というようなことを言った。 しばらくしてBはマレーシアに帰国した。 私は東京であったことを誰にも言わなかった。 されたことの意味がわかった 中学生、高校生になるにつれ、ぼんやりとした「何かとても嫌なこと」の輪郭が少しずつわかってきた。 それでも「Bのような大人が子どもに性的なことをするはずがない。 私が知らないだけで、外国のコミュニケーションの一種に違いない」と思い続けてきた。 大学の「精神医学」の授業で「小児性愛(ペドフィリア)」の言葉を初めて知ったときに、全身の力が抜けたように感じた。 否定したかったことが事実になり、自分がその「被害者」である可能性を認めざるをえなかった。 わかったとして、今さらどうすればよいのか。 精神医学の教科書にはどこにも書いていなかった。 大学で一人暮らしを始めた私は毎晩、自分だけにかかってくる電話を楽しみにしていた。 ある夜、電話が鳴ったのでワンコールで取ると、「お兄ちゃんだよ」。 Bからだった。 、お久しぶりです」と答えてから、後が続かなかった。 Bは一方的に、結婚する、今こんな仕事をしている、大学生活はどう? などと話していたと思うが、まったく耳に入ってこなかった。 なぜこの番号を知っているのか。 なぜ今さら電話をかけてくるのか。 相づちを打たない私の雰囲気を察したのか、すぐに電話は切れた。 受話器を置いてから猛烈な恐怖に襲われ、部屋の鍵を確認した。 マレーシアにいるBが訪ねてくるはずはないのに。 その直後、波のように後悔が押し寄せた。 あの行為の意味がわかった今なら、なぜあんなことをしたのか、問い詰めるチャンスだった。 二度と話したくはない相手だが、それだけは聞いておきたかった。 さらに、怒りも湧いてきた。 何も知らない母が、私に無断で電話番号を教えたのだ。 Bを嫌いだと意思表示していたつもりだったが、まったく伝わっていなかった。 情けなくて腹が立って、その夜は一睡もできなかった。 次に実家に帰省したとき、私は母にすべてを話した。 母は泣きながら謝り、抱きしめてくれた。 母はBに電話をかけ、二度と私たち家族に連絡を寄こすなと伝えたという。 私は19歳になっていた。 言わなければならないことではない その頃、大阪府の横山ノック知事(当時)に選挙運動中に体を触られたとして、女子大生が知事を訴えたことが世間を賑わせていた。 知人のつてで報告集会などに参加し、同い年の彼女が「なぜ抵抗しなかったのか」「知事をはめたのでは」などのバッシングに苦しんでいることを知った。 声をあげることの怖さを目の当たりにすると同時に、彼女に比べたら私に起きたことなんて大したことない、という気持ちが強くなった。 リスクを背負って権力者に立ち向かう彼女は、きっと性犯罪被害者の現状に一石を投じるはずだ。 でも、一般の外国人留学生に密室で10年前にされたことを今さら私が話しても、何の社会的意義もなさそうだった。 私はBに刑罰も社会的制裁も補償も望まないし、その記憶以外はいたって元気だ。 夫には、結婚する前に「言わなければならないこと」のような気がしていて、「昔こんなことがあって... 」と切り出したことがある。 彼の反応は「そうなんだ」だった。 拍子抜けした。 後になって、そんな10年以上前のことをいきなり打ち明けられても「そうなんだ」としか言えないよな、と思った。 私が「言わなければならないこと」だと信じ込んでいたことのほうが、どこかで染み付いた無意味な貞操観念だったのかもしれない。 だから私はその後、誰にも言わなかった。 言えなかったのではない。 言わなかったのだ。 「私は、嫌だった」 たまたま性的被害に遭ったからといって、それを誰かに言うか言わないかの選択まで、自らに課された使命のように延々と悩み続けなければならないなんて、何かおかしい。 「レイプに比べたら... 」「痴漢くらい」「公然わいせつなんて」とお互いに遠慮して「私は、嫌だった」と言えないのもおかしい。 あんな酷い目に遭った人でさえ実名で語ったのだから、あなたも沈黙を破りましょう、と第三者に言われるのもおかしい。 性犯罪被害者とひとくくりに言っても、一人ずつ状況も関係性も違う。 似たようなことがあっても受け止め方が違う。 大事にしたいその後の人生も違う。 だから、声をあげてもいいし、あげなくてもいい。 声をあげることにも、あげないことにも理由なんていらない。 たまたま性犯罪に遭ったことは、恥じ入ることでも、隠すべきことでも、落ち度を指摘されることでもない。 誰でもSNSやネットで発信できる。 交通事故に遭ったのと同じように、かわいい猫の写真をアップするのと同じように、言いたいと思ったら言いたい相手を選んで言えばいいだけだ。 「 metoo」と声をあげることは、あくまで自分主体でいい。 「社会を変えるためにあなたも声をあげよう」ではなく、逆なのだ。 「私も声をあげたい、ここにいるから」、それだけだ。 詩織さんはインタビューでこう語っている。 「残念ながらレイプは、誰にでも起こりうることです。 まずは司法で裁いてもらいたい。 ただ、もし司法で裁けなくても被害者が責められるのではなく、『話しても大丈夫、助けを求めてもいいんだ、一緒に考えていくから』という社会に少しでもなれば、と思うのです」 声をあげると「なぜか」と問われ、声をあげないと「いない」ことにされる。 私はまず、この構造を変えていきたい。

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