あなたといたい しわくちゃに何年経っても。 【バリー: 2年の経年変化】BALLY スクリーブとタピールレーダーオイルの実力

面接で「10年後の自分」を聞かれた時の的確な答え方【例文あり】

あなたといたい しわくちゃに何年経っても

それは彼女の日課のひとつであったが、しかし、その日の風は、どこかいつもと様子が違っていた。 得体の知れない、悪い予感が纏わりついている。 彼女には、ほんの少し先の未来を見通す力が備わっていた。 かつて赴いた戦場でも、一度たりとも、被弾したことはない。 未来予知の力によって磨き上げられた、彼女のその高い洞察力は、毎朝吹く風の、微細な違いを捉えることを可能にした。 日によって、気持ちよく吹き抜けるような風もあれば、重苦しく身体に巻きついてくるような風もあり、前者が吹く日には、大抵、なにか良い知らせが届き、後者が吹く日には、大抵、なにか悪い知らせが届くのだった。 それは一種の占いといってもよかった。 その日の風は、明らかに後者の性質を持っていた。 ねばねばと絡みついてくる、経験のない不快な感覚に、エイラは顔をしかめた。 エイラのその美しい背中を見つめるとき、彼女の胸にはいつも、新鮮な感動がふくらんだ。 オラーシャの冬は寒い。 一日中ずっと、気温が氷点下を超えていることもしばしばある。 エイラは、風の行方を見るときには、どんなに寒い日であっても、すぐ戻るよ、と言って、水色のパーカー一枚で出ていった。 オラーシャと同じ寒冷地のスオムス出身である彼女にとって、氷点下の寒さなど、慣れっこではある。 とはいえ、薄着には違いなかった。 いつもなら、エイラは、すぐ戻る、の言葉通り、二、三分もすれば引き返してきた。 けれどその日は、いつまで経っても、小屋に背を向けたままであった。 サーニャは、壁に並んだふたつのコートのうち、茶色い方を羽織り、そして、白い方を片手に掛けたあと、ペーチカの上にやかんを置いて、玄関のドアを開けた。 「……エイラ、どうしたの? そんな恰好でずっと外にいたら、風邪、引いちゃうわ」 そう言って、サーニャが後ろからコートをかけてやると、エイラは一瞬、はっとしたような、そんな表情をしたあと、すぐにいつもの優しい顔になって、振り返り、サーニャの頭を、ぽんと撫でた。 「ゴメンゴメン。 なんでもないんだ」 「……ほんとう?」 「うん。 別に、大したことじゃない」 サーニャが眉をひそめる。 サーニャのその瞳は、会話の間じゅうずっと、エイラの瞳へと向けられていた。 しかし、エイラは、コートに袖を通しながら、不自然に、小屋の方を見つめるばかりで、サーニャへと目を向けることはなかった。 それはエイラの、はっきりとした癖のひとつであった。 嘘をつくとき、エイラは頑なにサーニャと視線を合わせなかった。 他の人のときは、もう少しうまくやるのだけれど、サーニャに対してだけは、罪悪感からか、どうしても目を合わせられず、ぎくしゃくとしてしまうのだった。 エイラがサーニャに嘘をつくことは珍しいことではなかった。 しかしその嘘は、サーニャを怖がらせないための、不安にさせないための、優しい嘘ばかりであった。 「……なら、いいけど」 サーニャもそれは理解していた。 だから、たとえエイラの嘘に気付いても、深く追及することはしなかった。 とはいえ、隠し事をされるというのは、あまり気分の良いものではない。 いつもより少し低いその声には、明らかな不満の色が混じっていた。 「コート、ありがとな。 ……さ、戻ろ」 エイラの右手が、サーニャの腰に回される。 そこでようやく目が合った。 ばつが悪そうに頬をかくエイラの左手を、サーニャが両手で、ぎゅっと包んだ。 うわっ、と、声を上げるエイラ。 真っ白な頬が、ほんのりと、赤くなった。 くすり、と微笑みながら手を離し、サーニャが小屋へと歩きだす。 その背中を見て、エイラは、なんだよ、もう、と呟き、赤い顔のまま、がしがし頭を掻いた。 そして、それから、ふっと、空を仰いだ。 灰色の雲が、一面に広がっていた。 カールスラント解放戦ののち、各所に蔓延っていたネウロイは、突如として姿を消した。 余りにも唐突なその出来事に対して、様々な陰謀論が囁かれはしたが、ともかく、人類は、ネウロイに勝利したのであった。 ネウロイ消滅後の数年間、世界は平和そのものであった。 エイラとサーニャも、軍を離れ、生き別れたサーニャの両親を探すために、ウラルの山を越え、各地をまわった。 行く先々で得た情報によれば、どうやら、オラーシャのはるか東、ハバロフスクの辺りで、戦火を逃れた人々による大規模なキャンプが張られていた、というのは確かなことであるらしかった。 ふたりはすぐにハバロフスクへ向かい、郊外にある丘の上の、レンガ造りの小さな小屋で暮らしはじめた。 なかなか有益な情報を得ることはできなかったが、それでも、それはとても平穏で、のどかな生活であった。 「うー、寒い寒い」 小屋へと戻ってくるなり、エイラは、ずるずる鼻をすすりながら、ペーチカへと手をかざした。 しゅんしゅんと、やかんが音を立てている。 「あんな格好で外にいたんだもの。 当たり前よ」 サーニャが呆れ顔で言った。 返す言葉もない、という風に、エイラがぎゅっと目をつぶる。 背中がみるみる縮んでいく。 「すぐ、あったかい紅茶淹れてくるから、ちょっと待ってて」 そう言って、やかんを手に、キッチンへ消えたサーニャに、ありがと、と声を返し、エイラは、窓のそばの椅子に腰を下ろした。 ほんの少しの温もりが、エイラの冷えた下半身に伝わった。 外では相変わらず、強い風が吹いている。 振り払うことのできない悪寒にも、あれからずっと、身体中が包まれている。 それは間違いなく、寒さのせいだけではなかった。 沈みそうな気持ちを切り替えようとして、エイラは、ぱん、と自分の頬を叩いた。 窓辺に置かれたラジオのツマミをひねってみる。 すると荘厳な音楽が流れだした。 ゆっくり耳を傾けてみると、少しだけ、心が落ち着いていく気がした。 「あら、珍しいわね。 エイラが、クラシックだなんて」 銀色のトレイに、紅茶のカップをふたつ乗せて戻ってきたサーニャが、目を丸くする。 「ま、たまにはな。 気分転換、ってやつ」 カップを受け取り、ふうふうと息を吹きかけながら、エイラが言う。 湯気の立つカップに口をつけ、ずず、とひと口啜ってみれば、茶葉の香りが口から鼻へと芳しく通り抜ける。 舌にはぽってりと、程よい甘みが残される。 たっぷりのはちみつに、ほんの少しのラム酒が入った、サーニャの特製ブレンドだ。 「サーニャの淹れる紅茶は、いつも美味しいな」 「うふふっ。 そう言ってもらえると、嬉しいわ」 互いに微笑み合うふたり。 あたたかなまどろみに、部屋中が包まれる。 「……なあ、サーニャ」 しばらく経ってから、エイラが、窓の外を見つめながら、言った。 「どうしたの、エイラ」 目をぱちぱちとさせながらサーニャが答えた。 少しばかり、夢の中にいたようだ。 「あのさ、そろそろ……浦塩のほうに行ってみないか? ここに来てだいぶ経つけど、あんまり、大した情報、入ってこないし」 「浦塩……そうね。 ここで暮らしはじめて、もう半年くらい、経つものね」 「あそこは扶桑の租借地だけど、中心街にはオラーシャ人もけっこういるみたいだし、行ってみる価値はあると思うんだ」 「うん。 私もそう思う。 この辺りでキャンプが張られていたんだったら、中には、浦塩のほうまで逃げた人も、きっといるはずだもの」 「よし……それじゃ遅くても一週間後くらいには、ここを出られるようにしよう」 エイラがごくりと紅茶を飲み干した。 サーニャも、両手でカップを傾け、こくり、と一口飲んだ。 そしてそれから、懐かしむように、ぐるりと、小屋の中を見渡した。 「……この小屋とも、お別れね」 「だな」 手を頭の後ろで組んで、天井の明かりを見つめるエイラ。 「案外、悪い暮らしじゃなかったよな」 「うん……だからちょっと、長居しちゃったのかも」 サーニャが目を閉じる。 絶え間なく吹く風が、窓を叩いている。 「楽しかったわ。 すごく」 なにか言いたげな風に、ペーチカの中で、がしゃりと崩れる薪の音。 「もしサーニャのご両親が、無事に見つかったら……」 そのとき、それまで悠然と流れていたクラシックの音色が、突然、ぷつりと止んだ。 「……なんだ?」 言いかけた言葉をしまい込んで、怪訝そうにラジオを見つめるエイラ。 サーニャが、はあ、と、ため息をついた。 「故障じゃ、ないわよね」 ざざ、と音が鳴った。 低い男の声が流れだした。 臨時ニュースです、と言っている。 ……人間の欲望というものは、限りない。 ネウロイとの戦争が終結すれば、次に勃発するのが、敵を失った人間同士の争いであることは、明白であった。 エイラが今までにない、不気味な風を感じた、まさにその日。 オラーシャ軍は、スオムスへと突然の侵攻を開始した。 宣戦布告なきその侵攻は、世界全土を巻き込んだ、果てしなき戦争の始まりを意味していた。 サーニャの手からこぼれ落ちたカップが、真っ白なカーペットに茶色い染みを作っている。 すぐにエイラが駆け寄った。 「大丈夫か? やけどとか、してないか」 「エイラ……今の……」 「ああ。 なんか、嫌な予感、してたんだ。 さすがに、まさか戦争が始まるなんて、思ってなかったけどな。 ……このカーペット、染みが残っちゃうな。 まあ、いいか」 エイラがキッチンへ向かい、バケツと雑巾を手に戻ってきた。 サーニャの顔が、いつにも増して、青白くなっている。 「エイラ……どうするの……?」 「どうするって、なにがだよ」 「スオムスに戻らなくて、いいの……?」 「おいおい。 私が軍を離れて、何年経つと思ってるんだよ。 私にはもう、関係ないよ。 だから、気にすんな」 サーニャの足元にしゃがみ込み、カーペットを拭きながら答えるエイラ。 「でも、この先どうなるか分かんないから、なるべく早く、ここを引き払おう。 できれば、明日にでも」 「エイラ……」 サーニャが声を震わせ、瞳を潤ませる。 「なんて顔、してんだよ」 エイラが腰を上げ、膝に手をついて、にっこりと笑った。 「心配すんな。 私はずっと、サーニャのそばにいるよ」 その瞳は真っすぐに、サーニャの瞳を貫いていた。 浦塩へ行くための支度は夜までかかった。 朝一番の鉄道で行こう、ということで話がまとまったので、簡単な夕食を済ませたのち、ふたりは並んで床に就いた。 夜おそく、不意にサーニャは目を覚ました。 朝方の出来事が尾を引いていたのだろう。 あまり気分は良くなかった。 闇の中、大きなベッドで寝返りを打ち、手を伸ばす。 けれど、いつもそこにあるエイラの背中が見つからない。 室内にも、人の気配はなかった。 サーニャは一瞬、青くなったが、まだエイラが寝床を離れてそんなに時間が経ってはいないらしい。 シーツにはっきりとした温もりが残っている。 そして枕が、ほんの少しだけ、しめっていた。 布団をはねのけサーニャは飛び起きた。 壁のコートを手探りではぎ取り勢いよく玄関のドアを開けた。 外はしんとした白黒の世界であった。 世界の果てには雪明かりと月明かりの混じり合う小高い丘がある。 銀色の髪がそこで静かに揺れていた。 白い背中が立ち尽くしていた。 エイラはきっと泣いている。 はるか彼方、遠い遠いスオムスに思いを馳せ、泣いている。 サーニャはすぐにドアを閉じた。 コートを壁に掛け直し、ベッドに戻った。 しばらくすると玄関で物音がした。 気配が静かに近付いてくる。 もぞもぞ、とベッドにもぐり込んできた背中に、ぎゅっと抱きつくと、エイラは、起こしちゃったか、と言った。 サーニャは寝ぼけた振りをした。 するとエイラはやさしく、サーニャの頭を撫でた。 その冷え切った手が、サーニャには、たまらなく愛おしく感じられた。 [newpage] 翌朝ふたりは眠い目をこすりながら小屋を出た。 浦塩はオラーシャの南東の端にある。 広いオラーシャの中で、ハバロフスクからはまだ、近いほうではあるが、それでも移動には丸一日かかる。 ふたりが浦塩の駅に辿り着く頃には、辺りはすでに真っ暗になっていた。 ひとまずは宿探しである。 サーニャが大通りへ向かおうとすると、エイラが、そっちはやめとこう、と言った。 サーニャが、どうして、と問うと、エイラは、私はいちおう、テキコクジンだからな、と、おどけた風に笑った。 裏通りには雪にまみれた木賃宿が一軒あった。 お世辞にも綺麗だとはいえないような、寂れた宿であった。 宿主の老婆に当面の宿泊費を支払うと、しわくちゃの口で、二階の隅が空いている、とぼそぼそ言った。 客商売を営んでいるとは思えないほどに無愛想な態度だった。 しかし今のふたりにはむしろその方が有り難い。 用意された部屋に入り、サーニャがベッドに腰を下ろすと、ひどくつめたく、固い感触がした。 「これから、どうなるのかしら」 サーニャは思わず呟いた。 「なんとか、なるさ」 エイラがぽんとサーニャの頭に手を置きながら言った。 それから何週間かはとくに何事もなく過ぎた。 良いことも悪いこともなかった。 スオムスの陥落は近い。 「ここ最近、ずっとこれね」 「だな。 スオムスは物資は少ないけど、兵士はしっかり訓練されてるからな。 そう簡単には、いかないさ」 ラジオを消して、サーニャは小さな窓から外を見た。 裏通りは閑散としている。 けれども大通りへ出て市場に行けば恐らく大勢の人がいるであろうと思われた。 もうすぐ、年が明ける。 オラーシャでは新年は盛大に祝われる。 浦塩に住む多くのオラーシャ人たちも、その準備に精を出しはじめる頃だ。 はるか西側で起きている戦争は、極東まではほとんどその影響を及ぼさない。 年明けには、きっと各々の家庭で豪勢な料理が並び、絢爛なヨールカが飾られるに違いない。 「ねえ、エイラ。 私、一度ハバロフスクに戻るわ。 欲しいものがあるの。 ……エイラはどうする?」 少し考えてからエイラが答えた。 「……私は、やめておくよ。 ごめんな。 ホントは、ついていきたいんだけど」 それはサーニャにとって、ある程度予期された回答であった。 浦塩へ来てからというもの、エイラは、異様なまでに周囲の目を気にしていた。 情報収集のため街へ繰り出すときなども、いつも毛皮の帽子をすっぽりとかぶり、どこから調達したのか伊達眼鏡をかけ、口元はしっかりとマフラーで覆っていたほどだ。 「それじゃ、お留守番、よろしくね」 「ああ。 気をつけて、行ってきてな」 「うん。 分かってるわ」 「忘れもん、すんなよ。 欲しいもの書いたメモとか、持っていったほうがいいんじゃないか? 知らない人についていっちゃダメだぞ」 「もう。 分かってるわよ。 子どもじゃないんだから」 サーニャはくすりと微笑んだ。 その日の夕方の夜行列車でサーニャはハバロフスクへと発った。 エイラには、新年を迎える準備がしたいから、と伝えていたが、しかしこの出発にはもっと別の理由があった。 浦塩の市場にはオラーシャ人向けの品物が各種取り揃えられている。 新年の準備をするだけであれば、遠出の必要はとくにない。 ではどうしてサーニャは、丸一日かけてまでハバロフスクを目指しているのか。 それはサルミアッキを買うためだった。 サルミアッキはスオムスの伝統的な菓子である。 独特の風味を持つことでも知られ、身も蓋もない言い方をすれば、苦いゴムを公衆便所に落としたような味がする。 エイラはこの小さな黒い飴をとても好んだ。 大好物だといってもよかった。 あんまりにも美味しそうにエイラがそれを食べるので、サーニャは一度分けてもらったことがある。 しかしすぐに吐きだした。 そうして金輪際口にはしないと固く誓った。 その味は、食べ慣れている人にしか理解できない代物であるといってよい。 旅の途中、エイラは、新しい土地を訪れるたびに、街のあちこちを巡り巡って、サルミアッキを探していた。 けれどいつも最後には、すねたような顔をして店を出てきて、やっぱ、スオムス以外では、売ってないのかなあ、などと呟いていた。 ハバロフスクに着くまでは、その繰り返しだった。 ハバロフスクの駅前の並びに小さな雑貨屋がある。 恐らく、オラーシャで唯一、サルミアッキを取り扱っている店だ。 そこをはじめて訪れたときのエイラの様子を、サーニャは今でもはっきりと覚えている。 ごちゃごちゃした店内をふたりで見回っていると、不意にエイラが、店の一角を指差して、頭を抱え、嘘だろ、と呟いた。 見れば、サルミアッキの黒いパッケージが、そこでひっそりと並んでいる。 そのうちのひとつをエイラは震える手でつまみ上げた。 そうして何度も何度も裏返したり、元に戻したりしたあと、頬をつねりながら、サーニャに、コレ、買っといて、と言った。 会計を終え、店を出てからも、エイラはまだ、ぼんやりとした顔で、自分の頬をつねり続けていた。 けれども、サルミアッキを受け取り、箱を開けて、ぽいと一粒口に放り込んだ瞬間、ようやく、夢から覚めたように、こう言った。 「……ああ。 美味い。 そうだよ。 この味だ。 夢じゃないんだな。 まさかオラーシャで、コイツを食べられるとは思わなかった。 ああ、美味い。 美味いな。 やっぱりサルミアッキは、最高だ」 それからエイラはたびたびその店を訪ねるようになった。 サーニャも時折ついていった。 エイラはサルミアッキを一度にひと箱だけしか買わなかった。 あればあるだけ食べてしまうので、まとめ買いはしないようにしているらしかった。 たしかにそのひと箱は毎回その日のうちに無くなっていた。 ばたばたとハバロフスクを出てきてしまったので、エイラはもうずいぶん、サルミアッキを口にしていない。 ささやかな新年のお祝いとしてそれを渡せば、きっと喜んでくれるに違いない。 まだ街は薄暗く、どこの店も開いていない。 サーニャはひとまずホテルへ向かい、軽く朝食をとった。 それから少しだけベッドでうとうとした。 するといつの間にやら陽が高く昇っていた。 疲れていたのかしら、などと、誰が聞いているわけでもない言い訳をこぼしつつ、サーニャはふたたび街へと繰り出した。 久しぶりに訪れたハバロフスクはサーニャにとって意外なほど新鮮に映った。 目移りしながら色々と買い込んでいるうちに、街はオレンジ色に染まっていった。 すこし買いすぎてしまったかもしれない。 けれど一度ホテルに戻るのもめんどうだ。 こんなときストライカーユニットがあればいいのに。 そんなことを考えながら、サーニャは最後に例の雑貨屋へと向かった。 相変わらず、ごちゃごちゃとした店だった。 荷物が多い今のサーニャには、店内を動き回るだけでもひと苦労である。 しかしそこにサルミアッキはなかった。 売り切れというわけではない。 サルミアッキがあった場所には別の商品が置かれていた。 サルミアッキは影も形もなくなっていた。 他の場所に移ったのかもしれないと、サーニャは店内をくまなく見回った。 ここにもない。 ここにもない。 鼓動がしだいに早くなっていった。 結局どこにもサルミアッキはなかった。 サーニャはがっくりと肩を落とした。 戦争の影響が、こんなところにも及んでいるなんて……。 サーニャは縋る思いで店の奥へ向かい、カウンターの向こうの店主に問いかけた。 「あの……サルミアッキは、もう、置かなくなってしまったのでしょうか」 それまで読んでいた新聞から目を離し、じろり、と店主がサーニャのことを見た。 そしてすぐに、たっぷりたくわえた白いあごひげを指でひねりながら、カウンターの奥へ引っ込んでいった。 しばらくして戻ってきた店主の手には見慣れた黒いパッケージが握られていた。 サルミアッキだった。 「あ……ありがとうございます……!」 店主はそれをぽんとカウンターに置いた。 サーニャは何度も頭を下げながら代金を払った。 そうして店を出ようとした。 すると背後から、お嬢さん、と声がかかった。 振り返ると店主と目が合った。 [newpage] 「エイラ!」 サーニャが勢いよくドアを開くと、エイラはすでに起きていて、机でなにか書き物をしていた。 「そんなに慌てて、どうしたんだ。 帰ってくるの、今日の夜遅くのはずだろ」 机の上の紙を封筒に入れ、引き出しにしまいこみながらエイラが言った。 「あなたに……エイラに、スパイ疑惑がかかってるって。 私、聞いたの。 ハバロフスクで。 だから急いで帰ってきたのよ。 夜行列車に乗って……」 「サーニャ、ちょっと落ち着け。 な、大丈夫だから。 ……ほら、こっち来て、座って」 エイラが手を引き、サーニャをベッドに座らせた。 背中をさすりつつ、問いかける。 「……私に、スパイ疑惑がかかってるって?」 「うん。 駅前の雑貨屋で聞いたの。 覚えてるでしょう? サルミアッキが売ってるところ。 そこの人が言っていたの。 少し前に、軍の人が来たって。 それで、エイラの写真を見せてきて、この人を知りませんかって、聞いてきたって。 いつもウチで買い物してくれていたし、軍ともあんまり関わり合いにはなりたくなかったから、自分は何も言わなかったけど……気をつけたほうがいいって。 あの聞き方は、ただの人探しの雰囲気じゃなかったって。 そう、言っていたの」 「そうか……たしかに、オラーシャ軍がわざわざ、スオムス人の私を探すなんてのは、まあ、そういうこと以外、ありえないだろうな」 サーニャの目からぽろぽろと涙がこぼれた。 「噂では、聞いてたんだ。 戦果がなかなか挙げられなくて、オラーシャ軍が苛立ってる、っていうのは。 でもまさか、もうハバロフスクまで手が回ってるなんてな。 もう少し、時間はあると思ってたんだけど」 エイラが立ち上がり、部屋の隅に置いてあった自分のリュックを手にとった。 「エイラ……?」 そして、机の引き出しから、さっきしまった封筒を取り出し、サーニャへと差し出した。 「これ、あとで読んでくれ」 「なに、これ……。 エイラ、あなたいったい、どこへ行くつもりなの」 「……浦塩を、出る」 「それなら私もついていくわ。 すぐ、準備するから。 ねえ、浦塩を出て、どこに行くの?」 「ダメだ。 私ひとりで行く。 これ以上私といっしょにいたら、サーニャにも迷惑がかかる」 「そんなの気にしないわ。 私、あなたといたいの。 私もいっしょに行くわ。 逃げたらいいのよ。 ふたりで、どこまでも、ずっと」 「ダメだ。 ……手紙、絶対、読んでくれ。 それじゃ」 リュックを背負い、サーニャに背を向け、エイラが部屋のドアノブに手をかけた。 「待って! ねえ、待って。 あのとき言ってくれたじゃない。 ずっとそばにいるって。 そう言ってくれたじゃない。 あれは嘘だったの? ねえ、エイラ。 答えて」 エイラはなにも答えなかった。 「ねえ。 私、分かるのよ。 あなたの考えていること、分かるの。 ずっとあなたを見てきたから。 エイラ、あなた、死ぬつもりでしょう。 浦塩を出て、オラーシャに入って、軍部に自首して、死ぬつもりなんでしょう」 「……自首するつもりなのは、本当だよ。 よくわかったな。 でも、死ぬつもりなんてないさ。 自首したほうが、罪が軽くなるかもしれないだろ。 なんとかして、スパイ疑惑を晴らせる可能性だってあるじゃないか」 「そんなこと、絶対にないわ。 自首したら間違いなく、殺される。 今のオラーシャ軍がそんなに甘くないってこと、エイラも知ってるでしょう。 嘘だわ。 エイラ、あなた、嘘をついてる」 「……私は嘘なんてついてない」 「じゃあ、私の目を見て言って。 必ず、生きて帰ってくるって。 そう言って。 私の目を見て。 そうしたら行っていいわ。 私、いつまでも待ってるから。 この部屋で待ってるから。 あなたをずっと、待ってるから」 エイラは振り返らなかった。 けれど部屋を出ていくこともしなかった。 「やっぱり、嘘なのね。 やっぱり、ひとりで死のうとしてるのね」 サーニャがその背中に寄り添った。 「ねえ、お願い。 私をひとりにしないで。 ずっといっしょにいるって言ってくれたじゃない。 ねえ、お願い。 そばにいて。 私、あなたがいないとダメなの。 ねえ、お願い……」 「そんなこと言ったって、しょうがないだろ!」 エイラが振り返り、声を荒げた。 頬に大粒の涙が光っていた。 「そりゃ私だって、サーニャと、ずっといっしょにいたいよ。 でも、もう、どうしようもないじゃないか!」 へなへなと、エイラがその場にへたり込む。 「もう少し暖かくなれば、ここから西へ逃げることも不可能じゃないかもしれない。 でも今はまだ雪がある。 死ににいくようなもんだ。 どこにも逃げる場所なんてない。 ハバロフスクまで手が回ってるんだったら、こっちに来るのも時間の問題だぞ。 私ひとりが捕まって殺されるならまだいい。 でも、スパイを匿ってるとみなされたら、最悪ふたりとも銃殺刑だ。 それでいいのか? 私にはそんなの、耐えられない」 「構わないわ。 私はそれでも、構わない」 サーニャははっきりとそう言った。 「あなたがどうしてもひとりで自首しにいくっていうのなら、私はこの部屋で、舌を噛み切って、死ぬわ」 その視線は、決意と覚悟を帯びていた。 「ねえ、エイラ……」 サーニャがエイラのそばにひざまずいた。 「私、もう、ひとりじゃ生きていけないの。 分かるでしょう? 私、ずっと前から、あなたのこと……」 「待ってくれ。 そこから先は、私に言わせてくれ」 サーニャの言葉を遮り、エイラが顔を上げる。 「……手紙には、書いたんだけどな。 やっぱり、こういうことは、自分の口から言わないとダメだよな。 なあ、サーニャ。 覚えてるか? 初めて話した日のこと」 「……一度だって、忘れたこと、ないわ。 私、あなたが声をかけてきてくれて、すごく嬉しかったのよ。 不安だったから。 どうしていいか、分からなかったから」 「笑った顔が見たかったんだ。 最初はただ、それだけ。 この子、笑ったら、どんな顔すんのかな、ってさ。 でもさ、話してみたら、色々、抱えてるって分かってさ。 ずっと寂しかったって、サーニャ、言ってたよな。 私がいつでも話し相手になってやる、って言ったら、サーニャ、はじめて笑ってくれたよな。 たぶんそのときからなんだ。 その笑顔を見たときからずっと、そうだったんだ」 エイラが涙をぬぐい、真っすぐにサーニャの顔を見た。 そうして、その身体を、ぎゅっと強く抱きしめた。 「好きだ、サーニャ。 愛してる。 あの日からずっと、好きだった」 「エイラ……!」 「ずっと言いたかった。 でも言えなかった。 怖かったんだ。 今の関係が好きだったから。 それを壊したくなかったから。 遅くなってゴメン。 こんな状況になってから言って、ゴメン」 「いいのよ。 もう、いいの。 私もよ。 私もずっと好きだったの。 ずっとあなたのこと見てたわ。 あの日からずっと。 初めて話したあの日から、ずっと。 もう二度と言わないで。 もう二度と、ひとりで死ぬなんて言わないで。 お願いよ。 お願い」 「ああ。 分かってる。 もう離さない。 ずっと一緒だ。 まず街で馬つきのソリを一台手配し、それから市場で色々な酒やら御馳走やらを買い込んだ。 残ったお金は無煙炭にまわし、それをドシドシペーチカに投げ込んで部屋で飲めや歌えやのドンチャン騒ぎをした。 夜になるまで騒いだあと、ふたりはひっそり街を出た。 宿の物置に繋いであったソリに乗り、海岸通りまで馬を走らせた。 ただひとつ持ったリュックには、残しておいた上等のウイスキーの角瓶が四、五本詰まっている。 ちょうど満月で雲も何もない夜だった。 月だけがふたりを見ていた。 ふたりはこれから、凍結した海の上に滑り出すつもりだ。 ルスキー島をまわり、一直線に沖の方に向かって馬を鞭打つつもりだ。 そうしてウイスキーを飲み飲み、どこまでも沖へ出るつもりだ。 そうすると、月のいい晩だったら氷がだんだんと真珠のような色から、虹のような色に変化して、眼がチクチクと痛くなって来るそうだ。 それでも構わずグングン沖へ出て行くと、今度は氷がだんだん真黒く見えて来るが、それから先は、ドウなっているか誰も知らないのだそうだ。 サーニャはこの話を祖母から何度も聞かされて育った。 なんでも、オラーシャに古くから伝わる伝承であるらしい。 どうせ銃殺されるなら、最後にふたりで、誰も知らない場所を目指そう。 今朝、サーニャはそう言って、エイラにこの伝承を話して聞かせた。 エイラはすぐにうなずいた。 私たちならきっと辿り着けると言って笑った。 ふたりは今、海岸通りにある荷馬車揚場の斜面の前にいる。 斜面の先にはどこまでも、果てしない氷の海が広がっている。 「とうとう、ここまで来ちゃったな」 海の彼方を見つめてエイラが言った。 「そうね」 サーニャはすでにウイスキーを飲みはじめている。 「……色々、あったよな」 「……うん」 「……あのさ。 あれ、覚えてるか? 501にいたころの話なんだけど……」 「……うふふっ。 勿論、覚えてるわ。 懐かしいわね……」 そこから思い出話がはじまった。 「……そのときペリーヌがこう言ったんだ……」 「……あ、思い出した。 ハルトマンさんがね……」 ふたりは過去を語った。 語り尽くそうとした。 「……みんな今ごろ、何してんだろうなあ……」 次第に伸びていく沈黙の時間に怯えながら、ふたりは必死で会話を続けた。 どれくらいそうして語り合っていただろうか。 夜の闇が最も深さを増すころ、思い出が、ついに今へと追いつく瞬間がやってきた。 「……ああ、懐かしい。 色々、あったな……」 「……楽しかったわ。 すごく楽しかった……」 もうずいぶん、意味のない、会話を続けるためだけの会話が続いている。 もはやふたりの間に過去はなかった。 あるのは、たったひとつの未来だけだった。 「……そろそろ、行くか」 エイラが手綱を握った。 とろんとした目をして、サーニャがエイラの肩に寄り添った。 「……ね……エイラ……」 「うん?」 「……キスして……」 エイラが一瞬、驚いたような顔をした。 けれどすぐにいつもの優しい顔になって、うなずいた。 「……ああ……」 エイラがサーニャの頬に軽く口づけた。 何も言わずにサーニャが目を閉じた。 少しして、ふたりの唇がそっと触れ合った。 長い長い、最後の口づけだった。 唇が離れてもサーニャは目を開けなかった。 目を閉じたままで、エイラの腕を、ひしと抱いた。 「……ね……エイラ……」 「うん?」 「……もしも……もしも氷が、扶桑まで続いていたら、ドウスル……」 エイラがははっと笑った。 白い吐息が舞った。 「そうだな……」 エイラの右手が馬上鞭へと伸びた。 「もしも氷が扶桑まで続いてたら、そのときは……」 鞭が夜空を切り裂いた。 天高く馬が嘶いた。 「また宮藤に、うまいメシでも作ってもらおうぜ。 あのころ、みたいにさ……」 ソリが斜面を滑りだしていった。 それは彼女の日課のひとつであったが、しかし、その日の風は、どこかいつもと様子が違っていた。 得体の知れない、悪い予感が纏わりついている。 彼女には、ほんの少し先の未来を見通す力が備わっていた。 かつて赴いた戦場でも、一度たりとも、被弾したことはない。 未来予知の力によって磨き上げられた、彼女のその高い洞察力は、毎朝吹く風の、微細な違いを捉えることを可能にした。 日によって、気持ちよく吹き抜けるような風もあれば、重苦しく身体に巻きついてくるような風もあり、前者が吹く日には、大抵、なにか良い知らせが届き、後者が吹く日には、大抵、なにか悪い知らせが届くのだった。 それは一種の占いといってもよかった。 その日の風は、明らかに後者の性質を持っていた。 ねばねばと絡みついてくる、経験のない不快な感覚に、エイラは顔をしかめた。 エイラのその美しい背中を見つめるとき、彼女の胸にはいつも、新鮮な感動がふくらんだ。 オラーシャの冬は寒い。 一日中ずっと、気温が氷点下を超えていることもしばしばある。 エイラは、風の行方を見るときには、どんなに寒い日であっても、すぐ戻るよ、と言って、水色のパーカー一枚で出ていった。 オラーシャと同じ寒冷地のスオムス出身である彼女にとって、氷点下の寒さなど、慣れっこではある。 とはいえ、薄着には違いなかった。 いつもなら、エイラは、すぐ戻る、の言葉通り、二、三分もすれば引き返してきた。 けれどその日は、いつまで経っても、小屋に背を向けたままであった。 サーニャは、壁に並んだふたつのコートのうち、茶色い方を羽織り、そして、白い方を片手に掛けたあと、ペーチカの上にやかんを置いて、玄関のドアを開けた。 「……エイラ、どうしたの? そんな恰好でずっと外にいたら、風邪、引いちゃうわ」 そう言って、サーニャが後ろからコートをかけてやると、エイラは一瞬、はっとしたような、そんな表情をしたあと、すぐにいつもの優しい顔になって、振り返り、サーニャの頭を、ぽんと撫でた。 「ゴメンゴメン。 なんでもないんだ」 「……ほんとう?」 「うん。 別に、大したことじゃない」 サーニャが眉をひそめる。 サーニャのその瞳は、会話の間じゅうずっと、エイラの瞳へと向けられていた。 しかし、エイラは、コートに袖を通しながら、不自然に、小屋の方を見つめるばかりで、サーニャへと目を向けることはなかった。 それはエイラの、はっきりとした癖のひとつであった。 嘘をつくとき、エイラは頑なにサーニャと視線を合わせなかった。 他の人のときは、もう少しうまくやるのだけれど、サーニャに対してだけは、罪悪感からか、どうしても目を合わせられず、ぎくしゃくとしてしまうのだった。 エイラがサーニャに嘘をつくことは珍しいことではなかった。 しかしその嘘は、サーニャを怖がらせないための、不安にさせないための、優しい嘘ばかりであった。 「……なら、いいけど」 サーニャもそれは理解していた。 だから、たとえエイラの嘘に気付いても、深く追及することはしなかった。 とはいえ、隠し事をされるというのは、あまり気分の良いものではない。 いつもより少し低いその声には、明らかな不満の色が混じっていた。 「コート、ありがとな。 ……さ、戻ろ」 エイラの右手が、サーニャの腰に回される。 そこでようやく目が合った。 ばつが悪そうに頬をかくエイラの左手を、サーニャが両手で、ぎゅっと包んだ。 うわっ、と、声を上げるエイラ。 真っ白な頬が、ほんのりと、赤くなった。 くすり、と微笑みながら手を離し、サーニャが小屋へと歩きだす。 その背中を見て、エイラは、なんだよ、もう、と呟き、赤い顔のまま、がしがし頭を掻いた。 そして、それから、ふっと、空を仰いだ。 灰色の雲が、一面に広がっていた。 カールスラント解放戦ののち、各所に蔓延っていたネウロイは、突如として姿を消した。 余りにも唐突なその出来事に対して、様々な陰謀論が囁かれはしたが、ともかく、人類は、ネウロイに勝利したのであった。 ネウロイ消滅後の数年間、世界は平和そのものであった。 エイラとサーニャも、軍を離れ、生き別れたサーニャの両親を探すために、ウラルの山を越え、各地をまわった。 行く先々で得た情報によれば、どうやら、オラーシャのはるか東、ハバロフスクの辺りで、戦火を逃れた人々による大規模なキャンプが張られていた、というのは確かなことであるらしかった。 ふたりはすぐにハバロフスクへ向かい、郊外にある丘の上の、レンガ造りの小さな小屋で暮らしはじめた。 なかなか有益な情報を得ることはできなかったが、それでも、それはとても平穏で、のどかな生活であった。 「うー、寒い寒い」 小屋へと戻ってくるなり、エイラは、ずるずる鼻をすすりながら、ペーチカへと手をかざした。 しゅんしゅんと、やかんが音を立てている。 「あんな格好で外にいたんだもの。 当たり前よ」 サーニャが呆れ顔で言った。 返す言葉もない、という風に、エイラがぎゅっと目をつぶる。 背中がみるみる縮んでいく。 「すぐ、あったかい紅茶淹れてくるから、ちょっと待ってて」 そう言って、やかんを手に、キッチンへ消えたサーニャに、ありがと、と声を返し、エイラは、窓のそばの椅子に腰を下ろした。 ほんの少しの温もりが、エイラの冷えた下半身に伝わった。 外では相変わらず、強い風が吹いている。 振り払うことのできない悪寒にも、あれからずっと、身体中が包まれている。 それは間違いなく、寒さのせいだけではなかった。 沈みそうな気持ちを切り替えようとして、エイラは、ぱん、と自分の頬を叩いた。 窓辺に置かれたラジオのツマミをひねってみる。 すると荘厳な音楽が流れだした。 ゆっくり耳を傾けてみると、少しだけ、心が落ち着いていく気がした。 「あら、珍しいわね。 エイラが、クラシックだなんて」 銀色のトレイに、紅茶のカップをふたつ乗せて戻ってきたサーニャが、目を丸くする。 「ま、たまにはな。 気分転換、ってやつ」 カップを受け取り、ふうふうと息を吹きかけながら、エイラが言う。 湯気の立つカップに口をつけ、ずず、とひと口啜ってみれば、茶葉の香りが口から鼻へと芳しく通り抜ける。 舌にはぽってりと、程よい甘みが残される。 たっぷりのはちみつに、ほんの少しのラム酒が入った、サーニャの特製ブレンドだ。 「サーニャの淹れる紅茶は、いつも美味しいな」 「うふふっ。 そう言ってもらえると、嬉しいわ」 互いに微笑み合うふたり。 あたたかなまどろみに、部屋中が包まれる。 「……なあ、サーニャ」 しばらく経ってから、エイラが、窓の外を見つめながら、言った。 「どうしたの、エイラ」 目をぱちぱちとさせながらサーニャが答えた。 少しばかり、夢の中にいたようだ。 「あのさ、そろそろ……浦塩のほうに行ってみないか? ここに来てだいぶ経つけど、あんまり、大した情報、入ってこないし」 「浦塩……そうね。 ここで暮らしはじめて、もう半年くらい、経つものね」 「あそこは扶桑の租借地だけど、中心街にはオラーシャ人もけっこういるみたいだし、行ってみる価値はあると思うんだ」 「うん。 私もそう思う。 この辺りでキャンプが張られていたんだったら、中には、浦塩のほうまで逃げた人も、きっといるはずだもの」 「よし……それじゃ遅くても一週間後くらいには、ここを出られるようにしよう」 エイラがごくりと紅茶を飲み干した。 サーニャも、両手でカップを傾け、こくり、と一口飲んだ。 そしてそれから、懐かしむように、ぐるりと、小屋の中を見渡した。 「……この小屋とも、お別れね」 「だな」 手を頭の後ろで組んで、天井の明かりを見つめるエイラ。 「案外、悪い暮らしじゃなかったよな」 「うん……だからちょっと、長居しちゃったのかも」 サーニャが目を閉じる。 絶え間なく吹く風が、窓を叩いている。 「楽しかったわ。 すごく」 なにか言いたげな風に、ペーチカの中で、がしゃりと崩れる薪の音。 「もしサーニャのご両親が、無事に見つかったら……」 そのとき、それまで悠然と流れていたクラシックの音色が、突然、ぷつりと止んだ。 「……なんだ?」 言いかけた言葉をしまい込んで、怪訝そうにラジオを見つめるエイラ。 サーニャが、はあ、と、ため息をついた。 「故障じゃ、ないわよね」 ざざ、と音が鳴った。 低い男の声が流れだした。 臨時ニュースです、と言っている。 ……人間の欲望というものは、限りない。 ネウロイとの戦争が終結すれば、次に勃発するのが、敵を失った人間同士の争いであることは、明白であった。 エイラが今までにない、不気味な風を感じた、まさにその日。 オラーシャ軍は、スオムスへと突然の侵攻を開始した。 宣戦布告なきその侵攻は、世界全土を巻き込んだ、果てしなき戦争の始まりを意味していた。 サーニャの手からこぼれ落ちたカップが、真っ白なカーペットに茶色い染みを作っている。 すぐにエイラが駆け寄った。 「大丈夫か? やけどとか、してないか」 「エイラ……今の……」 「ああ。 なんか、嫌な予感、してたんだ。 さすがに、まさか戦争が始まるなんて、思ってなかったけどな。 ……このカーペット、染みが残っちゃうな。 まあ、いいか」 エイラがキッチンへ向かい、バケツと雑巾を手に戻ってきた。 サーニャの顔が、いつにも増して、青白くなっている。 「エイラ……どうするの……?」 「どうするって、なにがだよ」 「スオムスに戻らなくて、いいの……?」 「おいおい。 私が軍を離れて、何年経つと思ってるんだよ。 私にはもう、関係ないよ。 だから、気にすんな」 サーニャの足元にしゃがみ込み、カーペットを拭きながら答えるエイラ。 「でも、この先どうなるか分かんないから、なるべく早く、ここを引き払おう。 できれば、明日にでも」 「エイラ……」 サーニャが声を震わせ、瞳を潤ませる。 「なんて顔、してんだよ」 エイラが腰を上げ、膝に手をついて、にっこりと笑った。 「心配すんな。 私はずっと、サーニャのそばにいるよ」 その瞳は真っすぐに、サーニャの瞳を貫いていた。 浦塩へ行くための支度は夜までかかった。 朝一番の鉄道で行こう、ということで話がまとまったので、簡単な夕食を済ませたのち、ふたりは並んで床に就いた。 夜おそく、不意にサーニャは目を覚ました。 朝方の出来事が尾を引いていたのだろう。 あまり気分は良くなかった。 闇の中、大きなベッドで寝返りを打ち、手を伸ばす。 けれど、いつもそこにあるエイラの背中が見つからない。 室内にも、人の気配はなかった。 サーニャは一瞬、青くなったが、まだエイラが寝床を離れてそんなに時間が経ってはいないらしい。 シーツにはっきりとした温もりが残っている。 そして枕が、ほんの少しだけ、しめっていた。 布団をはねのけサーニャは飛び起きた。 壁のコートを手探りではぎ取り勢いよく玄関のドアを開けた。 外はしんとした白黒の世界であった。 世界の果てには雪明かりと月明かりの混じり合う小高い丘がある。 銀色の髪がそこで静かに揺れていた。 白い背中が立ち尽くしていた。 エイラはきっと泣いている。 はるか彼方、遠い遠いスオムスに思いを馳せ、泣いている。 サーニャはすぐにドアを閉じた。 コートを壁に掛け直し、ベッドに戻った。 しばらくすると玄関で物音がした。 気配が静かに近付いてくる。 もぞもぞ、とベッドにもぐり込んできた背中に、ぎゅっと抱きつくと、エイラは、起こしちゃったか、と言った。 サーニャは寝ぼけた振りをした。 するとエイラはやさしく、サーニャの頭を撫でた。 その冷え切った手が、サーニャには、たまらなく愛おしく感じられた。 [newpage] 翌朝ふたりは眠い目をこすりながら小屋を出た。 浦塩はオラーシャの南東の端にある。 広いオラーシャの中で、ハバロフスクからはまだ、近いほうではあるが、それでも移動には丸一日かかる。 ふたりが浦塩の駅に辿り着く頃には、辺りはすでに真っ暗になっていた。 ひとまずは宿探しである。 サーニャが大通りへ向かおうとすると、エイラが、そっちはやめとこう、と言った。 サーニャが、どうして、と問うと、エイラは、私はいちおう、テキコクジンだからな、と、おどけた風に笑った。 裏通りには雪にまみれた木賃宿が一軒あった。 お世辞にも綺麗だとはいえないような、寂れた宿であった。 宿主の老婆に当面の宿泊費を支払うと、しわくちゃの口で、二階の隅が空いている、とぼそぼそ言った。 客商売を営んでいるとは思えないほどに無愛想な態度だった。 しかし今のふたりにはむしろその方が有り難い。 用意された部屋に入り、サーニャがベッドに腰を下ろすと、ひどくつめたく、固い感触がした。 「これから、どうなるのかしら」 サーニャは思わず呟いた。 「なんとか、なるさ」 エイラがぽんとサーニャの頭に手を置きながら言った。 それから何週間かはとくに何事もなく過ぎた。 良いことも悪いこともなかった。 スオムスの陥落は近い。 「ここ最近、ずっとこれね」 「だな。 スオムスは物資は少ないけど、兵士はしっかり訓練されてるからな。 そう簡単には、いかないさ」 ラジオを消して、サーニャは小さな窓から外を見た。 裏通りは閑散としている。 けれども大通りへ出て市場に行けば恐らく大勢の人がいるであろうと思われた。 もうすぐ、年が明ける。 オラーシャでは新年は盛大に祝われる。 浦塩に住む多くのオラーシャ人たちも、その準備に精を出しはじめる頃だ。 はるか西側で起きている戦争は、極東まではほとんどその影響を及ぼさない。 年明けには、きっと各々の家庭で豪勢な料理が並び、絢爛なヨールカが飾られるに違いない。 「ねえ、エイラ。 私、一度ハバロフスクに戻るわ。 欲しいものがあるの。 ……エイラはどうする?」 少し考えてからエイラが答えた。 「……私は、やめておくよ。 ごめんな。 ホントは、ついていきたいんだけど」 それはサーニャにとって、ある程度予期された回答であった。 浦塩へ来てからというもの、エイラは、異様なまでに周囲の目を気にしていた。 情報収集のため街へ繰り出すときなども、いつも毛皮の帽子をすっぽりとかぶり、どこから調達したのか伊達眼鏡をかけ、口元はしっかりとマフラーで覆っていたほどだ。 「それじゃ、お留守番、よろしくね」 「ああ。 気をつけて、行ってきてな」 「うん。 分かってるわ」 「忘れもん、すんなよ。 欲しいもの書いたメモとか、持っていったほうがいいんじゃないか? 知らない人についていっちゃダメだぞ」 「もう。 分かってるわよ。 子どもじゃないんだから」 サーニャはくすりと微笑んだ。 その日の夕方の夜行列車でサーニャはハバロフスクへと発った。 エイラには、新年を迎える準備がしたいから、と伝えていたが、しかしこの出発にはもっと別の理由があった。 浦塩の市場にはオラーシャ人向けの品物が各種取り揃えられている。 新年の準備をするだけであれば、遠出の必要はとくにない。 ではどうしてサーニャは、丸一日かけてまでハバロフスクを目指しているのか。 それはサルミアッキを買うためだった。 サルミアッキはスオムスの伝統的な菓子である。 独特の風味を持つことでも知られ、身も蓋もない言い方をすれば、苦いゴムを公衆便所に落としたような味がする。 エイラはこの小さな黒い飴をとても好んだ。 大好物だといってもよかった。 あんまりにも美味しそうにエイラがそれを食べるので、サーニャは一度分けてもらったことがある。 しかしすぐに吐きだした。 そうして金輪際口にはしないと固く誓った。 その味は、食べ慣れている人にしか理解できない代物であるといってよい。 旅の途中、エイラは、新しい土地を訪れるたびに、街のあちこちを巡り巡って、サルミアッキを探していた。 けれどいつも最後には、すねたような顔をして店を出てきて、やっぱ、スオムス以外では、売ってないのかなあ、などと呟いていた。 ハバロフスクに着くまでは、その繰り返しだった。 ハバロフスクの駅前の並びに小さな雑貨屋がある。 恐らく、オラーシャで唯一、サルミアッキを取り扱っている店だ。 そこをはじめて訪れたときのエイラの様子を、サーニャは今でもはっきりと覚えている。 ごちゃごちゃした店内をふたりで見回っていると、不意にエイラが、店の一角を指差して、頭を抱え、嘘だろ、と呟いた。 見れば、サルミアッキの黒いパッケージが、そこでひっそりと並んでいる。 そのうちのひとつをエイラは震える手でつまみ上げた。 そうして何度も何度も裏返したり、元に戻したりしたあと、頬をつねりながら、サーニャに、コレ、買っといて、と言った。 会計を終え、店を出てからも、エイラはまだ、ぼんやりとした顔で、自分の頬をつねり続けていた。 けれども、サルミアッキを受け取り、箱を開けて、ぽいと一粒口に放り込んだ瞬間、ようやく、夢から覚めたように、こう言った。 「……ああ。 美味い。 そうだよ。 この味だ。 夢じゃないんだな。 まさかオラーシャで、コイツを食べられるとは思わなかった。 ああ、美味い。 美味いな。 やっぱりサルミアッキは、最高だ」 それからエイラはたびたびその店を訪ねるようになった。 サーニャも時折ついていった。 エイラはサルミアッキを一度にひと箱だけしか買わなかった。 あればあるだけ食べてしまうので、まとめ買いはしないようにしているらしかった。 たしかにそのひと箱は毎回その日のうちに無くなっていた。 ばたばたとハバロフスクを出てきてしまったので、エイラはもうずいぶん、サルミアッキを口にしていない。 ささやかな新年のお祝いとしてそれを渡せば、きっと喜んでくれるに違いない。 まだ街は薄暗く、どこの店も開いていない。 サーニャはひとまずホテルへ向かい、軽く朝食をとった。 それから少しだけベッドでうとうとした。 するといつの間にやら陽が高く昇っていた。 疲れていたのかしら、などと、誰が聞いているわけでもない言い訳をこぼしつつ、サーニャはふたたび街へと繰り出した。 久しぶりに訪れたハバロフスクはサーニャにとって意外なほど新鮮に映った。 目移りしながら色々と買い込んでいるうちに、街はオレンジ色に染まっていった。 すこし買いすぎてしまったかもしれない。 けれど一度ホテルに戻るのもめんどうだ。 こんなときストライカーユニットがあればいいのに。 そんなことを考えながら、サーニャは最後に例の雑貨屋へと向かった。 相変わらず、ごちゃごちゃとした店だった。 荷物が多い今のサーニャには、店内を動き回るだけでもひと苦労である。 しかしそこにサルミアッキはなかった。 売り切れというわけではない。 サルミアッキがあった場所には別の商品が置かれていた。 サルミアッキは影も形もなくなっていた。 他の場所に移ったのかもしれないと、サーニャは店内をくまなく見回った。 ここにもない。 ここにもない。 鼓動がしだいに早くなっていった。 結局どこにもサルミアッキはなかった。 サーニャはがっくりと肩を落とした。 戦争の影響が、こんなところにも及んでいるなんて……。 サーニャは縋る思いで店の奥へ向かい、カウンターの向こうの店主に問いかけた。 「あの……サルミアッキは、もう、置かなくなってしまったのでしょうか」 それまで読んでいた新聞から目を離し、じろり、と店主がサーニャのことを見た。 そしてすぐに、たっぷりたくわえた白いあごひげを指でひねりながら、カウンターの奥へ引っ込んでいった。 しばらくして戻ってきた店主の手には見慣れた黒いパッケージが握られていた。 サルミアッキだった。 「あ……ありがとうございます……!」 店主はそれをぽんとカウンターに置いた。 サーニャは何度も頭を下げながら代金を払った。 そうして店を出ようとした。 すると背後から、お嬢さん、と声がかかった。 振り返ると店主と目が合った。 [newpage] 「エイラ!」 サーニャが勢いよくドアを開くと、エイラはすでに起きていて、机でなにか書き物をしていた。 「そんなに慌てて、どうしたんだ。 帰ってくるの、今日の夜遅くのはずだろ」 机の上の紙を封筒に入れ、引き出しにしまいこみながらエイラが言った。 「あなたに……エイラに、スパイ疑惑がかかってるって。 私、聞いたの。 ハバロフスクで。 だから急いで帰ってきたのよ。 夜行列車に乗って……」 「サーニャ、ちょっと落ち着け。 な、大丈夫だから。 ……ほら、こっち来て、座って」 エイラが手を引き、サーニャをベッドに座らせた。 背中をさすりつつ、問いかける。 「……私に、スパイ疑惑がかかってるって?」 「うん。 駅前の雑貨屋で聞いたの。 覚えてるでしょう? サルミアッキが売ってるところ。 そこの人が言っていたの。 少し前に、軍の人が来たって。 それで、エイラの写真を見せてきて、この人を知りませんかって、聞いてきたって。 いつもウチで買い物してくれていたし、軍ともあんまり関わり合いにはなりたくなかったから、自分は何も言わなかったけど……気をつけたほうがいいって。 あの聞き方は、ただの人探しの雰囲気じゃなかったって。 そう、言っていたの」 「そうか……たしかに、オラーシャ軍がわざわざ、スオムス人の私を探すなんてのは、まあ、そういうこと以外、ありえないだろうな」 サーニャの目からぽろぽろと涙がこぼれた。 「噂では、聞いてたんだ。 戦果がなかなか挙げられなくて、オラーシャ軍が苛立ってる、っていうのは。 でもまさか、もうハバロフスクまで手が回ってるなんてな。 もう少し、時間はあると思ってたんだけど」 エイラが立ち上がり、部屋の隅に置いてあった自分のリュックを手にとった。 「エイラ……?」 そして、机の引き出しから、さっきしまった封筒を取り出し、サーニャへと差し出した。 「これ、あとで読んでくれ」 「なに、これ……。 エイラ、あなたいったい、どこへ行くつもりなの」 「……浦塩を、出る」 「それなら私もついていくわ。 すぐ、準備するから。 ねえ、浦塩を出て、どこに行くの?」 「ダメだ。 私ひとりで行く。 これ以上私といっしょにいたら、サーニャにも迷惑がかかる」 「そんなの気にしないわ。 私、あなたといたいの。 私もいっしょに行くわ。 逃げたらいいのよ。 ふたりで、どこまでも、ずっと」 「ダメだ。 ……手紙、絶対、読んでくれ。 それじゃ」 リュックを背負い、サーニャに背を向け、エイラが部屋のドアノブに手をかけた。 「待って! ねえ、待って。 あのとき言ってくれたじゃない。 ずっとそばにいるって。 そう言ってくれたじゃない。 あれは嘘だったの? ねえ、エイラ。 答えて」 エイラはなにも答えなかった。 「ねえ。 私、分かるのよ。 あなたの考えていること、分かるの。 ずっとあなたを見てきたから。 エイラ、あなた、死ぬつもりでしょう。 浦塩を出て、オラーシャに入って、軍部に自首して、死ぬつもりなんでしょう」 「……自首するつもりなのは、本当だよ。 よくわかったな。 でも、死ぬつもりなんてないさ。 自首したほうが、罪が軽くなるかもしれないだろ。 なんとかして、スパイ疑惑を晴らせる可能性だってあるじゃないか」 「そんなこと、絶対にないわ。 自首したら間違いなく、殺される。 今のオラーシャ軍がそんなに甘くないってこと、エイラも知ってるでしょう。 嘘だわ。 エイラ、あなた、嘘をついてる」 「……私は嘘なんてついてない」 「じゃあ、私の目を見て言って。 必ず、生きて帰ってくるって。 そう言って。 私の目を見て。 そうしたら行っていいわ。 私、いつまでも待ってるから。 この部屋で待ってるから。 あなたをずっと、待ってるから」 エイラは振り返らなかった。 けれど部屋を出ていくこともしなかった。 「やっぱり、嘘なのね。 やっぱり、ひとりで死のうとしてるのね」 サーニャがその背中に寄り添った。 「ねえ、お願い。 私をひとりにしないで。 ずっといっしょにいるって言ってくれたじゃない。 ねえ、お願い。 そばにいて。 私、あなたがいないとダメなの。 ねえ、お願い……」 「そんなこと言ったって、しょうがないだろ!」 エイラが振り返り、声を荒げた。 頬に大粒の涙が光っていた。 「そりゃ私だって、サーニャと、ずっといっしょにいたいよ。 でも、もう、どうしようもないじゃないか!」 へなへなと、エイラがその場にへたり込む。 「もう少し暖かくなれば、ここから西へ逃げることも不可能じゃないかもしれない。 でも今はまだ雪がある。 死ににいくようなもんだ。 どこにも逃げる場所なんてない。 ハバロフスクまで手が回ってるんだったら、こっちに来るのも時間の問題だぞ。 私ひとりが捕まって殺されるならまだいい。 でも、スパイを匿ってるとみなされたら、最悪ふたりとも銃殺刑だ。 それでいいのか? 私にはそんなの、耐えられない」 「構わないわ。 私はそれでも、構わない」 サーニャははっきりとそう言った。 「あなたがどうしてもひとりで自首しにいくっていうのなら、私はこの部屋で、舌を噛み切って、死ぬわ」 その視線は、決意と覚悟を帯びていた。 「ねえ、エイラ……」 サーニャがエイラのそばにひざまずいた。 「私、もう、ひとりじゃ生きていけないの。 分かるでしょう? 私、ずっと前から、あなたのこと……」 「待ってくれ。 そこから先は、私に言わせてくれ」 サーニャの言葉を遮り、エイラが顔を上げる。 「……手紙には、書いたんだけどな。 やっぱり、こういうことは、自分の口から言わないとダメだよな。 なあ、サーニャ。 覚えてるか? 初めて話した日のこと」 「……一度だって、忘れたこと、ないわ。 私、あなたが声をかけてきてくれて、すごく嬉しかったのよ。 不安だったから。 どうしていいか、分からなかったから」 「笑った顔が見たかったんだ。 最初はただ、それだけ。 この子、笑ったら、どんな顔すんのかな、ってさ。 でもさ、話してみたら、色々、抱えてるって分かってさ。 ずっと寂しかったって、サーニャ、言ってたよな。 私がいつでも話し相手になってやる、って言ったら、サーニャ、はじめて笑ってくれたよな。 たぶんそのときからなんだ。 その笑顔を見たときからずっと、そうだったんだ」 エイラが涙をぬぐい、真っすぐにサーニャの顔を見た。 そうして、その身体を、ぎゅっと強く抱きしめた。 「好きだ、サーニャ。 愛してる。 あの日からずっと、好きだった」 「エイラ……!」 「ずっと言いたかった。 でも言えなかった。 怖かったんだ。 今の関係が好きだったから。 それを壊したくなかったから。 遅くなってゴメン。 こんな状況になってから言って、ゴメン」 「いいのよ。 もう、いいの。 私もよ。 私もずっと好きだったの。 ずっとあなたのこと見てたわ。 あの日からずっと。 初めて話したあの日から、ずっと。 もう二度と言わないで。 もう二度と、ひとりで死ぬなんて言わないで。 お願いよ。 お願い」 「ああ。 分かってる。 もう離さない。 ずっと一緒だ。 まず街で馬つきのソリを一台手配し、それから市場で色々な酒やら御馳走やらを買い込んだ。 残ったお金は無煙炭にまわし、それをドシドシペーチカに投げ込んで部屋で飲めや歌えやのドンチャン騒ぎをした。 夜になるまで騒いだあと、ふたりはひっそり街を出た。 宿の物置に繋いであったソリに乗り、海岸通りまで馬を走らせた。 ただひとつ持ったリュックには、残しておいた上等のウイスキーの角瓶が四、五本詰まっている。 ちょうど満月で雲も何もない夜だった。 月だけがふたりを見ていた。 ふたりはこれから、凍結した海の上に滑り出すつもりだ。 ルスキー島をまわり、一直線に沖の方に向かって馬を鞭打つつもりだ。 そうしてウイスキーを飲み飲み、どこまでも沖へ出るつもりだ。 そうすると、月のいい晩だったら氷がだんだんと真珠のような色から、虹のような色に変化して、眼がチクチクと痛くなって来るそうだ。 それでも構わずグングン沖へ出て行くと、今度は氷がだんだん真黒く見えて来るが、それから先は、ドウなっているか誰も知らないのだそうだ。 サーニャはこの話を祖母から何度も聞かされて育った。 なんでも、オラーシャに古くから伝わる伝承であるらしい。 どうせ銃殺されるなら、最後にふたりで、誰も知らない場所を目指そう。 今朝、サーニャはそう言って、エイラにこの伝承を話して聞かせた。 エイラはすぐにうなずいた。 私たちならきっと辿り着けると言って笑った。 ふたりは今、海岸通りにある荷馬車揚場の斜面の前にいる。 斜面の先にはどこまでも、果てしない氷の海が広がっている。 「とうとう、ここまで来ちゃったな」 海の彼方を見つめてエイラが言った。 「そうね」 サーニャはすでにウイスキーを飲みはじめている。 「……色々、あったよな」 「……うん」 「……あのさ。 あれ、覚えてるか? 501にいたころの話なんだけど……」 「……うふふっ。 勿論、覚えてるわ。 懐かしいわね……」 そこから思い出話がはじまった。 「……そのときペリーヌがこう言ったんだ……」 「……あ、思い出した。 ハルトマンさんがね……」 ふたりは過去を語った。 語り尽くそうとした。 「……みんな今ごろ、何してんだろうなあ……」 次第に伸びていく沈黙の時間に怯えながら、ふたりは必死で会話を続けた。 どれくらいそうして語り合っていただろうか。 夜の闇が最も深さを増すころ、思い出が、ついに今へと追いつく瞬間がやってきた。 「……ああ、懐かしい。 色々、あったな……」 「……楽しかったわ。 すごく楽しかった……」 もうずいぶん、意味のない、会話を続けるためだけの会話が続いている。 もはやふたりの間に過去はなかった。 あるのは、たったひとつの未来だけだった。 「……そろそろ、行くか」 エイラが手綱を握った。 とろんとした目をして、サーニャがエイラの肩に寄り添った。 「……ね……エイラ……」 「うん?」 「……キスして……」 エイラが一瞬、驚いたような顔をした。 けれどすぐにいつもの優しい顔になって、うなずいた。 「……ああ……」 エイラがサーニャの頬に軽く口づけた。 何も言わずにサーニャが目を閉じた。 少しして、ふたりの唇がそっと触れ合った。 長い長い、最後の口づけだった。 唇が離れてもサーニャは目を開けなかった。 目を閉じたままで、エイラの腕を、ひしと抱いた。 「……ね……エイラ……」 「うん?」 「……もしも……もしも氷が、扶桑まで続いていたら、ドウスル……」 エイラがははっと笑った。 白い吐息が舞った。 「そうだな……」 エイラの右手が馬上鞭へと伸びた。 「もしも氷が扶桑まで続いてたら、そのときは……」 鞭が夜空を切り裂いた。 天高く馬が嘶いた。 「また宮藤に、うまいメシでも作ってもらおうぜ。 あのころ、みたいにさ……」 ソリが斜面を滑りだしていった。

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ハンドメイドで生活をすると決めてから1年経ちました

あなたといたい しわくちゃに何年経っても

誰もが憧れるメジャーデビューを果たしても、様々な理由で解散してしまうバンドは少なくありません。 ロックバンド「Eins:Vier(アインスフィア)」は、12年の時を経て再結成。 今年結成30周年を迎えました。 3人のメンバーが歩んだそれぞれの道、再び一緒に活動して見つけたもの。 「売れるぞ!」という思いで突っ走ったデビュー前。 コロナ禍を経て今、あらためて音楽の価値に向き合う3人の軌跡を聞きました。 (朝日新聞・坂本真子) 偶然かかってきた電話 Eins:Vierは1990年に4人で結成されました。 バンド名はドイツ語の「1」と「4」から。 1995年にメジャーデビューし、ビジュアル系ブームの中で、英国ロックの影響を受けた透明感のあるギターサウンドや、個性的な歌声、人間の内面を描いた歌詞など、独自のスタイルで注目されました。 しかし、1999年1月にボーカルHirofumiさんが脱退。 同じ年の11月に解散しました。 4人は別々の道へ。 それぞれに音楽活動を続け、2011年、ライブイベント出演のためにHirofumiさん、ベースLunaさん 、ギターYoshitsuguさんの3人で再結成します。 12年のブランクを経て再始動したきっかけは、とある酒席での、Lunaさんの携帯電話への着信。 さいたまスーパーアリーナで行われるイベント「V-ROCK FES」への出演を依頼するものでした。 その場には偶然Hirofumiさん、Yoshitsuguさんも同席していました。 Lunaさんは振り返ります。 「僕1人だったら、『メンバー絶対やる気ないと思うんで』と、すぐ断っていたと思います。 でも、2人が目の前にいたので、意見を聞けた。 最初は『やっぱりやりたくない』という感じだったけど、その場にいた人に『12年もやっていないのにそんなビッグな話をもらえるなんて、すごくありがたいことじゃないのか』と言われて、『確かにそうだよな』と。 少し軟化して、『1回やってみる選択肢もあるかも』という話になったんです」 1度だけのつもりでステージに立ったら、大きな反響が。 そして、「再結成した以上はワンマンライブを」と周囲に勧められ、翌2012年に東京と大阪で1回ずつライブを行いました。 ベースLunaさん=小松陽祐氏撮影 「一緒に音楽をやれるうちにやっておこう」 すると、それまで最もかたくなに「やりたくない」と主張していたHirofumiさんの気持ちに変化が生まれたそうです。 「もともと、『やりたくない』と言ってバンドを辞めた人間が率先して再結成することはできないし、自分の思考から完全に排除していました。 でも今この話を断ったら、もう2度と機会はない。 メンバーの間に『やってもいいんちゃう』というムードが出てきたなら、ここで俺がやるかやらないかで話が決まるのなら、一歩踏み出してやってみようと。 さいたまスーパーアリーナのステージに立って、待っていてくれた人たちの存在を実感したし、拒む理由がなくなって、みんなのタイミングが合ったらいつでもやる、と決めたんです」 そう語るHirohumiさんが2人に呼びかけ、2017年、4年ぶりに再始動。 Hirofumiさんの50歳記念ライブでも演奏し、翌2018年には6都市を回るツアーも行いました。 当初は乗り気でなかったというLunaさんですが、「Hiroちゃんが『50歳になる年にアインスをもう1回やりたい』と言ってきたので、僕も発想を変えて、『大きく動くならやるよ』と。 その流れでライブツアーや、セルフカバーアルバムの話が出てきたんです」。 一方、Yoshitsuguさんが承諾したのは違う理由から。 「みんな元気で生きている、3人で一緒に音楽をやれるうちにやっておこう、と。 年を重ねて考えが変わりました」 2018年に発売されたセルフカバーのベストアルバム「Searching Red Light」では、約20年前の楽曲を、いまの3人がかっこいいと思うアレンジで演奏。 変わらず張りのある歌声と、深みを増したサウンドからは、3人のこれまでの歩み、バンドの歴史を感じました。 Hirofumiさんは、何をやればいいのか、ずっと迷いがあったと言います。 「メジャーデビュー後の活動で見失ったものが、辞めたら見えてくると思いきや、辞めてもずっと『どうやって歌ってたんやろ』『何をどういう思いで詞に書いていたんかな』と」 「wipe」「Raff-Cuss」などのバンドや、ソロで活動しながらも、迷い続けたというHirofumiさん。 2011年のEins:Vier再結成ライブで気づいたことがありました。 「俺はこういう風に歌ってたんや、もっとこんな感じにできるな、と意識が開けて、気持ちがスッキリした。 思うまま何も背負わず、楽しめばいいのかな。 うまいこといかなくても、これでええねん、これが俺が今まで築いた全てです、と思えるようになったんですね」 LunaさんもRaff-Cussで活動していましたが、途中で体調を崩し、3カ月ほど入院します。 「不摂生がたたったのか、そこで全てが切れて、2年ぐらい引きこもりました。 もうバンドはやらへんやろうな、無理やろな、と思ってたんです」 そんなとき、古い知人に「Lunaさんのベースで歌いたいんです」「スケジュールも何もかもLunaさんがやりやすいようにするので」と頼み込まれました。 意を決して再びステージへ。 「やってみたら、できたんですね。 あ、できるんだ、と。 無理やり引きずり出してくれたその子には今でも感謝しています。 仲間と朝まで飲み明かすことも。 「そんなことはもうできないと思っていたので、まだ俺できるわ、と、めっちゃうれしかったですね」 Yoshitsuguさんは、「caterine」でメジャーデビューし、解散した後は、清春さん、TETSU69、INORANさんらのサポートを務めつつ、自らのバンド「alcana」で活動。 2014年からはHirofumiさんとのアコースティックユニット「yohiaco」で活動しています。 「ありがたいことに、アインスの後もずっと音楽を続けていて、アインスがあったからこそ、音楽で食っていくことができているし、自分のバンドもやれているんですよね。 それはすごくありがたいことだな、と思います」 ギターYoshitsuguさん=小松陽祐氏撮影 「歌いたいという思いは10年前より増している」 そんなYoshitsuguさんは、20代の頃よりも深く音楽を聴き込むようになったそうです。 「若いときは単純に曲として聴いていたけど、今は1つのものをすごく深く掘り下げていくと、アレンジとか、まだまだ気づいていないことがあったと感じることがいっぱいあって。 そういう聴き方が増えて、音楽に対してより深く向き合うようになりましたね」 これに対し、Lunaさんは音楽をあまり聴かなくなったとか。 「今はたまに聴いても昔のCD。 この3年で買ったCDは2枚ぐらいかも。 音楽との距離はめっちゃ空いたけど、一歩一歩、これで終わってもいいと思いながらやっているので、そういう意味では昔と変わっていないと思います」 最近は、曲を作ることは減りましたが、他の人が作った曲をアレンジすることがとても楽しいそうです。 「アイデアが広がっていって、1曲1曲に込めている思いは昔と変わらないし、自分が作っていた曲と変わらないぐらい思い入れのある曲ができあがる。 充実しています」 一方、Hirofumiさんは、Eins:Vierでメジャーデビューする前と後で、音楽との関わり方が大きく変わった、と言います。 「デビュー前は、『売れるぞ!』という思いがあったけど、メジャーに行って、俺はああいう世界は精神的に合わないと実感して辞めたんです。 人に伝えて受け入れられたいし、売れたいという思いは今でもあるけど、もっと好きなようにやりたい。 自分の許容範囲、スキルもひっくるめて、今は好きなようにやっているので、歌いたいという思いは10年前より増しているし、音楽があって良かったな、という思いも日に日に増しています」 ボーカルHirofumiさん 「自分に響かないとお客さんにも響かない」 音楽活動をする上で、3人が最も大切にしていることは何でしょうか。 Hirofumi さんは「正直であること」ときっぱり。 それはずっと変わらないそうです。 「だって、それができなくなったからアインスを辞めたし、それが見えなくなったから悩んだ。 最近は正直になれていると思います」 Lunaさんは、本気でやること。 「手を抜いたり、周りに合わせたりして本質を見失わないように。 何でも言われた通りにやるのは自分に向いてないし、しんどい。 それより自分で本気で向かい合うことを大事にしていないとアカンな、と思っています」 「どれだけ響くか、を大事にしている」と語るのは、Yoshitsuguさんです。 「自分に響かないとお客さんにも響かない。 自分がワクワクしないとバンドはやれないし、やりたくない。 ただ、いろんなことを経験すると、ワクワクする幅が狭まってくる。 ライブでも曲作りでも、どれだけ響くか、を大事にしたい。 それが全てですね」 3人がそれぞれのやり方で、音楽と真っすぐ向き合ってきたことが、よくわかる言葉です。 「Eins:Vier」の3人=小松陽祐氏撮影 「体形も体重も変わってない」 これからについて、どう考えているかも聞きました。 Lunaさんは、将来の目標というものはないそうです。 「今、この瞬間はまだやりたいからやってる。 他に人生でやりたいこともあるから、そっちに切り替わるときが来るかもしれないけど、今この瞬間は、まだやりたいのでやってます」 昨年、「生誕五十年記念祭」が盛大に催されたYoshitsuguさんですが、いつまで続けられるのか、という恐怖感があると言います。 「若い人がいっぱい出てくるし。 いつまでやれるのかな、と考えたりしますね。 音楽をずっと続けていきたいという気持ちはあるんですけど、長生きするかどうかもわからんし、そういう意味では精いっぱいやることが大事なんかな、と思います」 Hirofumiさんは、50代に入ってあまり悩まなくなり、精神的に楽になったそうです。 体力作りも欠かしません。 「継続、習慣であって、努力じゃないんですよ、アインスを始めた20代の頃から続けてきた地道な筋トレが、まさに30年かけて、今ようやく実を結んでいます。 体形も体重も変わってない。 といっても、もともとは自分に甘いんで、『まあ、しゃあないよな』という場面が腐るほどあるんです。 『ま、いいか』をどれぐらい減らしていけるか……」 初の無観客ライブを前に思うこと 今年、Eins:Vierは結成30周年を迎えました。 「お祭りのような意識。 続けていないので実感はない」(Hirofumiさん)そうですが、「やるんだったら、ある程度きちんとした形で動こう」(Lunaさん)と、4月に3日間イベントを主催し、7月に新曲を発売、9月に大阪と東京で単独ライブ……という計画を立て、準備を進めていました。 中でも新曲のリリースは21年ぶり。 今回インタビューした今年3月初め、まだ制作途中だった新曲について、「ワクワクするのか、がっかりするのか。 できあがった段階まで楽しみにしていてください」(Hirofumiさん)、「セルフカバーよりハードルが高い」(Lunaさん)、「いい曲に仕上げることしか考えてないです」(Yoshitsuguさん)と、口々に思いを語っていました。 ところが、新型コロナウイルスの感染拡大により、主催イベントは中止に。 単独ライブは来年5月に延期することが決まりました。 デビュー記念日の7月21日に発売予定だった新曲も延期されましたが、代わりにミニアルバムを秋に出すことが発表されました。 また、7月21日と8月26日に1曲ずつ、新曲を先行配信するそうです。 そして、7月21日には、彼らにとって初めての無観客ライブを配信します。 老舗ライブハウス、新宿LOFTでの演奏を、午後8時から配信予定です。 それに向けて3人がコメントを寄せてくれました。 Hirofumiさん 「まだ不思議な感覚です。 戸惑いの中進んでいます。 それでも、情熱は冷めることはない。 みんなと同じ時代の狭間で、精一杯歌うよ。 Eins:Vier結成30年にしてはじめての無観客ライヴ! 楽しい時間を共にしましょう」。 Lunaさん 「無観客ライブ。。 30年以上ライブをやってきてまさかこんな経験をすることになろうとは。 そこに居る自分がまったく想像出来ないけど、まぁ未知を楽しむということでせっかくやる以上なんらかの繋がりは感じられたらいいなと思います。 そうや! みんな立って観ろや~!!笑」 Yoshitsuguさん 「止むを得ずのイベント中止、残念でなりませんが、この状況下、配信ライブは僕らが今出来るファンのみんなと繋がれることのひとつ。 一方通行ではありますが、楽しみたいと思います! 早く会える日が来ることを願って」.

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新型コロナ 遺族からあなたへ

あなたといたい しわくちゃに何年経っても

こんにちは。 歩く大学生(1年)です。 僕は部として大学に通っています。 よく理系や法学部の方に 経ウェイ学部って暇なんでしょ。 って煽られることがあります。 「そんなことない!!」と言いたいのですが、実際その通りなんです。 一応15回中5回欠席したら単位もらえないことになるのですが、出席ある授業なんて第2外国語かゼミくらいで期末テスト前だけちょっと勉強するだけでいい学部になってます。 僕の大学の話になっちゃいますが、さっそく授業で学べたことを書いていこうと思います。 1年の授業で学んだこと ・中国語 第2外国語は中国語を取っていました。 学べた言葉は 「我 爱 你」くらいです。 期末テストは教科書内の文章そのまま出るので、前日12時間で詰めれば余裕で一番上の成績がとれます。 単位取ることだけなら4時間あれば余裕かな...。 春休みの今では全て頭から飛んで行きました。 ・経営史 ゼミの教授が経営史を担当している方だったので、ゼミではやの生い立ちから会社が成功するまでの歴史について研究していました。 このゼミは楽しかったし、勉強になりました。 ・数学 なんで文系で数学しなければならないの?とは思いましたが、そこまで難しい内容ではありませんでした。 1年間で行列、、くらい勉強しました。 PCは使いませんでした。 ・大まかな会社の仕組み 1年生だからってことがありますが、専門性の強いことはありませんでした。 例えば、商品は売れたあとに飽和して衰退していく。 みたいなことを授業ではやってましたね。 当たり前だなーと思って聞いてました。 楽単でした。 ・簿記3級レベルの会計 会計の授業で一番上の成績取れたら簿記3級レベル取れるくらいの知識になります。 テストも記号だし、単位取るだけなら授業一切出なくていいレベルでした。 授業中にずっと話していた人は教授にぶち切れられてました。 ・ し放題のテストでした。 僕はもちろん勉強しましたよ?やってることはデータを読み取って分散やを求めるような問題。 これが後に何につかわれるのかは謎です。 まとめ 授業で学んだことはこれくらいです。 楽単ばかりで法学部や理系の方は大変そうだな。 っていつも思っています。 これは勉強になったと思ったのは会計ですね。 授業は出なくても問題ないですが、会計の基礎を勉強できたのは自分でも身になっていると実感してます。 1年は専門性があまりなかったので、2年からは少し期待しています。 aruku002.

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